「仕事ができる人」というと、どんな人を思い浮かべますか?

短時間で効率的に成果をあげる人。課題の解決策をロジカルに導き出す人。斬新なアイデアを次々と発想する人。会社や部下の言いたいことを的確に汲み取り、期待以上のものを提供する人。

総じて、「頭の回転が速い人」——そんな形容の仕方が当てはまるのではないでしょうか。

では、そうした人たちは果たしてどんな思考回路で物事を考えているのでしょうか? その思考回路は後天的に鍛えることができるものなのでしょうか。本記事では、さまざまな著名人の「頭の回転術」を参考にしながら、ビジネスに応用するための方法を考えてみたいと思います。




1. 著名人の「頭の回転術」

「頭の回転が速い」「遅い」とはよく言いますが、脳のメカニズム上ではどのような状態を指すのでしょうか。

「頭の回転」の定義にもよりますが、一般的には、シナプスでつながれた神経細胞(ニューロン)のネットワークが複雑かつ効率的に張り巡らされていること。そしてそこを伝わる信号の伝達速度が速いこと、と考えられています。

「脳トレ」という言葉があるように、普段から脳をよく使って鍛えておけば、神経細胞同士のネットワークがつながり情報処理スピードが上がるとされています。

では、脳を鍛えるにはどんな方法が効果的なのでしょうか? 「早口で話す」「速読」「速聴」など巷にはさまざまなメソッドがあふれていますが、ここではまず、ビジネスシーンで活躍する人たちが実際に行なっている思考法やトレーニング法に着目してみましょう。

1-1. 三菱重工会長・大宮英明氏の「アナロジー思考法」

膨大な情報を整理することや、現状から課題を見出すことに苦手意識を持っている方は、三菱重工業の代表取締役会長・大宮英明氏の思考法がヒントになりそうです。

理系出身ながら論理的に物事を突き詰めるのが得意ではないという大宮氏。物事を整理するときは絵(フローチャート)を描くことからスタートするそうですが、その際に使うのが「アナロジー(類推)」という考え方。

たとえば、業務プロセスの効率化を図る場合。縦軸を各部署、横軸を時間にし、それぞれの業務工程を書き出していきます。そして、部署間のやり取りや関連のある事柄を線でひたすら結んでいきます。フローチャートに書き出してみると、無関係と考えていた事柄に関連性が見えてきたり、共通点が見えてきたりする。それにより全体像が可視化され、業務の無駄や改善策が浮かび上がってくるというものです。

アナロジーは、まったく新しいアイデアを生み出したいときにも効果的な思考法です。

たとえば新商品や新サービスの案を考えるときに、他業界の商品やサービスから類似点を見つけ出し、アイデアを応用するという具合です。近しい業界だと「盗用」にもなりかねませんから、営業スタイルや生産スタイル、顧客のタイプなどが似ている遠い業界に着目するのがコツ。

物事に関連性を見出す癖が身についてくると、膨大な情報を一度に受けても情報をスピーディに整理することができます。重要なものとそうでないもの、足りないものと無駄なものが判断できるようになり、新しいひらめきにもつながります。大宮氏によると、膨大な新聞記事に目を通すだけで情報同士のアナロジーが浮かび上がり、物事が整理されて本質が見えてくるようになるのだとか。

まずはトレーニングのためにも、情報を図にして結びつけることから始めてみてはいかがでしょうか。

1-2. 評論家・岡田斗司夫氏の「戦闘思考力」

「オタキング」を自称し、評論家やプロデューサーなどさまざまな顔を持つ岡田斗司夫氏。同氏は頭の回転力のことを「戦闘思考力」と称しています。

ディスカッションや商談の場で、相手の反応を受けてすぐにうまい切り返しができない…という方は、戦闘思考力の向上という観点からトレーニングをしてみるといいかもしれません。

戦闘思考力を鍛える方法として、同氏が挙げているのは以下の4つ。

■瞬発力を鍛える

「5秒のうちに結論を出す」など、自分の中で秒単位で締切を設けて、とにかく結論を出すトレーニング。

■フランス人式「とりあえず法」を使う

フランス人の話し方の特徴を模し、「それは○○です。理由は3つあります」ととりあえず最初に言及。喋りながら3つの理由を考えていくというトレーニング。

■「デッサン法」を使う

まずは考えていることをそのまま話してみて、あとから微調整をしていくというトレーニング。

■頭の「ギア」を使い分ける

  • トップギア …頭を高速で回転させている状態。スピードは速いが共感力(信頼性)は低い。トーク番組の切り返しなど。
  • ローギア …頭の回転は低速だが、その分じっくり思考して共感力を上げる。相手の話をしっかり聞き取るときなど。
  • ミドルギア …トップギアとローギアの中間。普段の自分の状態。

回転スピードと理解力を兼ね備え、さらにそれを自由自在に使い分けられることが、本当の「戦闘思考力」=頭の回転力の向上に繋がるのだということです。

日常のビジネスシーンで試しやすい方法なので、普段から意識して会話するようにしてみるといいでしょう。

1-3. 放送作家・田中イデア氏の「大喜利思考」

「企画会議でのブレストが苦手」「アイデアを求められてもすぐに出てこない」という方は、放送作家の田中イデア氏が提唱する「大喜利思考」を参考にしてみては?

大喜利思考とは、芸人の大喜利のように次々とアイデアを出せるようになる思考法のこと。「疑問力」「発想力」「解決力」「実現力」の4つを身につけることがカギだそうです。

■疑問力

物事の常識を知り、それを疑う力。まずは企画のテーマに対する世の中の常識を知り、「でも実態はどうなのだろう?」「○○という考え方があってもいいのでは?」と、すでにある常識をくつがえしてみる。それがアイデアのヒントに繋がります。

■発想力

次に7つのテクニックを用いて、アイデアを大量生産します。

  • 組み合わせ(別のものを組み合わせてみる)
  • 逆転(逆にしてみる)
  • 拡大(何かを足してみる)
  • 縮小(何かを引いてみる)
  • 連想(関連性のあるものを挙げてみる)
  • パロディ(すでにある企画を応用してみる)
  • 不満(自分の不満をのせてみる)

■解決力

アイデアを企画に昇華させるための力。商品であればそれを買う消費者、サービスであればサービスを享受する人、読み物であれば読者など、企画を受ける相手に「メリット」や「必要性」がなければ、その企画はいいものとは言えません。大量生産したアイデアを見直し、本当にいい企画かどうかを見極めていく過程で、解決力が養われます。

■実現力

最後は、先の3つの力を使って生み出した企画を実現するための力。プレゼン時や提案書作成時に使えるテクニックです。冒頭で企画趣旨を伝える際に、相手の共感を誘うような内容を持ってきます。

  • 自分自身の体験談など、個人的な思いを入れる
  • 「へぇ!」「そうなんだ!」と思わせるトリビアを入れる
  • 客観的なデータや数字を入れる

など

発想する上でのガイドラインのようなものがあると、ただ闇雲に考えるよりも効率的にアイデアが浮かびます。このようなガイドラインを自分の中に持っておくことも、頭の回転を速めるためには重要だと言えるでしょう。

1-4. ブロガー・ちきりん氏の「思考の棚」

これまでは頭の回転速度そのものを速める方法を紹介してきましたが、ブロガーのちきりん氏は、「頭の回転」というものを少し違う角度から捉えています。

得た情報をすぐに理解し、自分の意見やアイデアに変えて即発信できる人。いわゆる「頭の回転が速い」とされる人の多くは、実はその場で思考しているのではない、という考え方です。

こうした人たちは、自分の頭の中に「思考の棚」を作っています。そして、いま持っている情報を棚に整理しておき、「今度この情報が来れば、○○という結論が導き出せる」という考えをあらかじめ用意しています。言い換えれば、パズルの最後の1ピースを常に待っている状態、ということ。そのため、待っていた情報がそろった途端に目覚ましいスピードで結論に辿り着く、というわけです。

目指すべきゴールを普段から意識し、そのために足りないものを自覚しておくことで、いざというときに最短距離で目的に達することができる。これも一種の「頭の回転術」と言えるでしょう。

2. 頭の回転を速めるための簡単トレーニング

著名人の「頭の回転術」を参考にしつつ、より手軽にできるトレーニング法を並行して実践することで、思考力は着実に鍛えられていきます。本章では、日頃から簡単に取り入れられるトレーニング法をご紹介していきたいと思います。

2-1. 制限時間内にとにかくたくさん案を出す

一見、力技のように思えますが、実はとても重要なトレーニング。「限られた時間内に目標のアイデア数を達成する」というミッションを自らに課すことで、ダラダラ考えるよりも格段に思考スピードが鍛えられます。

数を出すことに慣れてきたら、大宮氏の「アナロジー思考」を使ったり、田中氏の「大喜利思考」を使うなどして、案のクオリティをより高めるという方法を取り入れてもいいでしょう。

2-2. お釣りの出ない支払い方をする

日常生活で手っ取り早くトライできる方法といえばこれ。買い物をする際に、お札だけで支払ってしまうのではなく、お釣りの小銭ができるだけ少なくなるように計算して支払います。

レジでは、店員さんや後ろのお客さんをあまり待たせられないという心理が働くので、瞬間的に必要なお金を計算して出すという訓練になります。

2-3. ひとり言を呟く

アメリカの心理学者の発表によれば、自分の考えを言葉にしてみると、情報が整理されて解決策がスムーズに導き出されるそう。問題が複雑化したときは、考えを声に出してみると解決の糸口が見つかるかもしれません。

また、声に出すことで脳が活性化し、記憶力が高まるという研究結果もあります。

2-4. 普段とは違う行動をする

アイデアの枯渇に悩んだときに有効な方法。いつもとは別のルートで帰宅する、電車を一駅前で降りて歩く、立ち寄ったことのないお店を覗く、あまり話したことのない人とコミュニケーションをとる、いつもは見ないテレビ番組を見る…などなど。

アイデアは、自分の中にある記憶や経験が結びついて生まれます。そのため、新しいインプットが多ければ多いほど、アイデアの種も増えるということ。日頃から五感をフルに使って新しい刺激を得るようにしていれば、いざというときのひらめきに繋がります。

2-5. ウォーキングをする

前頭葉の機能を高めて脳を活性化させる効果があると言われているのが、「歩く」こと。脚には全身の筋肉の約半分が集まっており、常に脳と情報のやり取りを行なっているため、両者は密接に関係しています。歩くと全身の血行がよくなって脳にも血液が行き渡る、という側面もあります。

体をあまり動かせなくなった年配の人はボケてしまうのも早い、という話はよく聞きますが、それも同じ原理によるものです。

ウォーキングのほかには、通勤電車の中で片足立ちするのも効果的と言われています。

2-6. 腸内環境を整える

脳と腸は一見関連性がないように思えますが、実は腸は「第二の脳」とも言われています。腸内には膨大な数の神経細胞が存在しており、脳との間に相互作用があるという研究結果も出ています。

大事なプレゼンやテストの前に腹痛に襲われた経験はありませんか? それも脳と腸の深い繋がりによるものです。

植物性乳酸菌が多く含まれる漬物や、動物性乳酸菌の宝庫であるヨーグルトなど、腸内環境を整えてくれる食べ物を意識的に摂ってみましょう。

3. おすすめの本

最後に、「頭の回転」にまつわるおすすめの書籍をご紹介します。さまざまな理論の中から自分に合ったものを取り入れ、実践してみてください。

頭の回転が速い人の話し方――あなたの会話力が武器になるユニバーサル・トーク×戦闘思考力

岡田斗司夫/フォレスト出版/2015年9月発売

本記事でもご紹介した「戦闘思考力」の鍛え方について書かれた一冊。どこでも・いつでも・誰にでも伝わる話し方「ユニバーサル・トーク」と、頭の回転を自在にコントロールする「戦闘思考力」を身につけることで、切り返し力やディペート力を手に入れる方法が説かれています。ビジネスシーンはもちろん、プライベートの人間関係などにも応用できそうな理論です。

大人のスピード思考法―頭の回転を速くする53の具体例

中谷彰宏/ダイヤモンド社/2000年11月発売

とにかく具体的な実践法を知りたいという方は、こちらがおすすめ。「ペンを持ったまま考える」「頭の回転が速い人と話をする」「トンチンカンでもいいからとにかく答えを出す」など、すぐに実践できるメソッドが列挙されています。短時間で読めてしまう手軽さもポイント。

論理トレーニング101題

野矢茂樹/産業図書/2001年5月

東大教授が新入生に勧める100冊の中に必ず登場するという本。ある文章から論理的な誤りを見つけ出したり、考えうる仮説を挙げてみるなど、101の問題を解きながら論理的思考力を養っていくかなり実践的な内容です。筋道立てて思考するコツを習得すれば、物事を正しくスピーディに理解・論証することができるようになるでしょう。

4. まとめ

限りある時間の中で成果をあげなければならないビジネスシーンにおいて、頭の回転は速いに越したことはないでしょう。本記事では、頭の回転を速めて情報整理力・切り返し力・発想力などを高めていく方法をご紹介してきました。

最後に本記事の内容をまとめておきますので、おさらいとしてお使いいただければと思います。

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