「ネット広告の費用対効果を高めたい」――今、この記事を読んでいるほとんどの方が、そうお考えのことと思います。

そこで質問させてください。「あなたがネット広告を使って、やりたいことは何ですか?」。

もし、この問いに対するあなたの答えが「モノを売ること」だとしたら。そのネット広告は、おそらくあなたの望み通りの役割を果たすことはないでしょう。

単刀直入に言ってしまうと、ネット広告単体でモノを売ることは出来ません。それ以前に、モノを売るためには以下の外せない原理原則があることを押さえておく必要があります。

  1. 見込み客を効率よく集める。
  2. 見込み客を既存客にする。
  3. 既存客を固定客にする。

モノを売る上で必要なのは“商品そのものの力”ではなく、実はこの仕組みです。ビジネスを行なう際、得てして人は売れそうな商品を仕入れ、あるいは製造し、その上で「買ってくれるお客様」を探すというプロセスを辿りがちです。

しかしそれは大きな誤解です。お客様がいさえすればビジネスは立ち上がります。もっと極端な話をすれば、現時点で資金や商品、お客様がいなくとも、前述した1・2・3の仕組みさえ構築できれば、ビジネスは成功軌道に乗せられるということです。

逆を言えば、この仕組みが揃っていない限り、ネットであろうとリアルの商いであろうとビジネスのスタートラインには永遠に立てません。どれほど成功のセオリーに則った“優れた”広告を用意したとしても、です。

最初の問いに戻ると、「ネット広告を使ってやるべきこと」は、1の「見込み客を効率よく集めること」。つまり広告宣伝のテクニックとは、ビジネスの入り口のドアをピカピカに磨き、蝶番のネジを滑りよくし、より多くの人に入ってきてもらえるよう集中することであると言い換えられます。

大切なのは、あなたがお客様を探すのではなく、お客様があなたの商品を探すカラクリを作ることです。お客様にとって見つけやすく入りやすいドア作り。この記事では、そのノウハウについてお話しします。




1. 顧客がレスポンスしたくなるバナーの共通点

ここに2つの広告があります。キャッチコピーが異なる以外は、サイズ・画像デザイン・色味、すべて同じ条件です。さて、どちらのキャッチコピーの広告がより良い反響を得られたでしょうか。

A. ビジネスクラスの航空券が、最大20%OFF!

B. まだ、航空券にムダ金を使いますか?

答えはB。Aと比較して、実に10倍もの反響だったそうです。

プロローグでもお伝えした通り、ネット広告の目的とは「見込み客」を探すことが第一義です。レスポンスしてくれた顧客がすなわち見込み客になりうるのですから。では、顧客がレスポンスしたくなるバナーには、一体どのような共通点があるのでしょうか。心理学の観点から紐解いていきましょう。

1-1. 行動要因を理解する

神田 昌典著『あなたの会社が90日で儲かる!』(フォレスト出版)によると、人間が行動する要因は2つしかないと言われているそうです。1つは「快楽を求める」ため。2つ目は「苦痛から逃れる」ため。そして後者の「苦痛から逃れる」は、前者の「快楽を求める」よりも強い行動要因となります。

この観点で見直してみると、どうでしょう。広告Aは、通常よりも安い価格で買い物ができるという「快楽」をフックにしていますが、広告Bは、浪費によって損をするという「苦痛」から逃れる側面を強調していると言えます。

このように、顧客がレスポンスしたくなるバナーの共通点には「苦痛を取り除くイメージ」があることを覚えておいてください。

1-2. ターゲットにするべき相手を理解する

続いて、AとBの広告が、それぞれどんな人をターゲットにしているかを考えてみましょう。

Aが訴求しているのは価格の安さであり、商品のお得感です。すなわちターゲットとしているのは「こうしている今でもすぐに、お得に旅行をしたい人」。

しかしそういう人は実際、購入に向けてどんな行動を取るでしょうか。恐らく「もっと安い商品があるかもしれない」と他社サイトを見に行って比較検討を始めるのではないでしょうか。よく利用する旅行代理店のカウンターに広告Aの切り抜きを見せてこれより安くならないか、と値切ってみたり、もしかしたら、忙しくて休みが取れないから、旅行自体やめた、となることだってあるかもしれません。

要は、今すぐ購入したい人がその通りの行動に移すまでには、超えるべきハードルが多すぎるということです。

広告Aがこうした「今すぐ客」のみをターゲットにしている一方で、広告Bがターゲットとするのは「そのうち客」。つまり、今ではなくそのうちお客様となりうる「見込み客」です。

「そのうち客」をターゲットとする側面には、3つのメリットがあります。それは

1)競合がいない

先ほど述べた通り、「今すぐ客」は複数社の商品を比較検討しています。たとえば「家が買いたい」という人に置き換えて考えてみてください。一生に一度の大きな買い物を、ある朝ポストに入っていた一枚の折込チラシだけで即決する人はいないでしょう。何軒もの住宅展示場に足を運んだり、周囲の人の評判を参考にしたりして熟考を重ね、ようやく一社に絞るのではないでしょうか。

つまり住宅メーカー側にしてみたら「今すぐ客」を相手にするには多くの競合と戦わねばならないということです。一方「そのうち客」には、競合がいない場合がほとんどです。

2)集客費用が安い

「今すぐ客」を獲得するためにはライバル社に競り勝つ必要があります。そのために、営業費用を余分に投下したり、価格競争にもつれ込んだりと消耗戦に陥りがちです。しかし「そのうち客」を獲得するためには、さほどコストはかかりません。

3)やりようによっては「今すぐ客」に育てられる

「そのうち客」を相手にすると言っても、「そのうち買ってくれる」のを手をこまねいて見ていればいいという訳ではありません。

たとえばこんな経験をしたことはないでしょうか。友人の話によく登場する、会ったこともなければ顔すら知らない人物。幾度となくプロフィールやその人となりなどを聞いているうちに、いつの間にか親近感が芽生え、好意を抱くまでになっていた、という経験を。

広告もそれと同じで、見込み客に情報を絶えずインプットさせていき、情報量を増やすことによって、購入の現実味が増していきます。それに比例するかのように購入意欲が高まり、購入時期が早期化することすらあり得ます。

つまり広告では、今すぐ商品がほしい人ではなく、興味のある人を集めることに集中することが得策だということです。

1-3.「違和感」を逆手に取る

「認知不協和」という心理学用語があります。人はバランスが崩れたもの、違和感のあるものに気を取られるという法則です。

「なんだ、これ」という反応を起こし、感情のバランスを崩す。すると、感情のバランスを崩した人は、そのバランスを立て直さずにはいられなくなる。その結果、何度も広告を見てしまう――こうしたメカニズムを利用することも有効です。

たとえばBの広告に、ちょっとしたシミやフォントのゆがみなど、「なんだ、これ」な要素をプラスしてみたとしら、Aとの反響の差はより開くかもしれません。

2. レスポンス倍増必至のバナーデザインを作成するコツ

ここまでは、いわゆる「理論」についてお伝えしてきました。ここからはいよいよ実践編。レスポンスが必ず倍増するバナーデザインを作成する上で、知っておきたいノウハウをお届けします。

2-1. 商品画像を使う

まず、バナーには極力「宣伝したい商品の画像」を使うようにしましょう。商品画像を使ったバナーとそうでないバナーとでは、実に1.5~2倍もの反響の差が出るというテスト結果も報告されています。

人気タレントの画像は絶対NGという訳ではありませんが、芸能人は人によって好き嫌いが分かれるというリスクがあります。そのことを考慮した上で判断するようにしましょう。

2-2. カメレオンになる

ネット広告をわざわざ見に来る人は稀です。むしろ「邪魔だ」とさえ思っている消費者がほとんどでしょう。

そのような現状において、FlashやGifアニメーションなどを用いてピカピカ点滅するようなギミックを広告に凝らすのははっきり言ってナンセンスです。どうしてもやるのであれば、悪目立ちすることを承知の上で作成してください。

皆、ネット広告など無視したいのですから、主張してはいけません。できるだけ広告と気付かれないように――たとえばニュースサイトなら記事の一部であるかのごときデザインを目指しましょう。掲載媒体のページ特徴をつかみ、場に馴染むようなバナーを作成することが得策。名付けて「カメレオン作戦」です。

2-3. キャッチコピーをメインに据える

お客にバナーを「広告」ではなく「媒体の一部」あるいは「情報」として受け取ってもらうには、キャッチコピーをメインにデザインすることも重要なポイントです。

記事コンテンツは、見出しと本文がほぼ9割、そして残り1割が写真の3要素で構成されています。よってバナーもその要領で作成すると良いでしょう。最近は写真に非常に大きなスペースを割いている記事コンテンツも増えてきていますが、かつての新聞の影響か、情報=文字、という認識はいまだ根強いものです。

3. レスポンス倍増必至のバナーテキストを作成するコツ

バナーデザインの次は、テキストを攻略しましょう。レスポンスを倍増させる上で押さえておきたい広告テキストの作成テクニックについてご紹介します。

3-1. キャッチコピーが命

まず、ネット広告において一番大切なのは「キャッチコピー」であることを認識してください。前章で、ネット広告など誰も見ない、と言いましたが、それでも「強いキャッチコピー」「巧いキャッチコピー」はしっかり顧客に届きますし刺さります。

前提として、皆がネット広告に興味があって、品評するかのようにまじまじと見てくれるのであれば、キャッチコピーなど不要です。その分、どこよりもカッコ良く、センスのあるデザイン制作に全精力を注ぐべきです。

ですが実際はそうではなく、ネット広告が無視される今だからこそ、キャッチコピーがその広告効果を左右すると言っても過言ではありません。

それでは、レスポンスのあるキャッチコピーとはどのように書けばいいのでしょうか。まずここで、ターゲットである広告のお客様の心理について考えてみましょう。

顧客は広告など無視したいと思っている。でも画面は見ている。何のために? …間違いなく、「何かしらの情報を得るため」です。

であれば、広告が語るメッセージも、ターゲットが欲している「情報」になりすませば良いのではないでしょうか。つまり、テキスト作成テクニックの1つ目は「情報っぽく」書くということ。デザインのコツと同様、掲載媒体内のコンテンツと同化するキャッチコピーを作ることに比重を置いてみてください。

3-2. 特定のターゲットに向けて書く

次に、ネット広告で反響の良いコピーに大切なのは「特定のターゲットのみを狙うこと」です。

例1)「1行追加すると3つバグが出る 秘伝のタレ」(転職サイト Green

例2)「49歳から人生一変!」(サントリー

ネットはあらゆる年齢層や趣味嗜好を持った人が、ピンポイントで自分の欲しい「情報」を探している場です。だからこそ、ネットユーザーが「これ、私のことだ」と感じれば、それは「広告」から「情報」に変わります。情報の先にある答えや詳細が気になって、かなりの確率でクリックしてくれるはずです。

企業のスローガンやイメージコピーではこうはいきません。「地図に残る仕事(大成建設)」「やがていのちに変わるもの。(ミツカン)」「お金で買えない価値がある(マスターカード)」…確かにこれらのコピーはセンスがあってカッコいいです。しかし「自分のことを言われている感」はあるでしょうか? ないに等しいですよね。

ネット広告の目的は商品に関心がある「見込み客」を集めることであり、商品の魅力をアピールしたり、イメージアップを図ることではありません。あくまでも、商品に興味がある人を募るということに意識を集中し、テキストを作ることでクリック率は確実に上がるでしょう。

3-3. 続きが気になるじらしコピー

ネット広告でもう一つ、クリック率が高いキャッチコピーとは「続きが気になるようにじらす」コピーです。

ネットサーフィンにしろ、情報収集にしろ、あなた自身がWeb媒体を見ている時の心理状態を思い浮かべてみてもわかるように、ボタンやリンクをクリックする時の目的は、「続きが読みたい」ただそれだけの単純な理由に他なりません。

ただし、いくらじらしたコピーでも、それが広告だと分かっていたらクリックすることはないでしょう。その先には「商品を買わされる」ことが目に見えているからです。「売らんかな」姿勢が見えた時点でダメなのですね。

よって重要なのは、広告と分からないように、情報っぽいコピーでじらすこと。

例)うわっ…私の年収、低すぎ…?(29歳Aさんの場合)

転職サイト「@type」のバナーです。かなり以前より出稿されているもので、パロディも多数生まれているほど有名なバナーですが、情報系じらしバナーというと思い浮かぶのがこの広告。少し分析してみましょう。

ターゲット:20代後半女性。新卒で入社した会社に勤続すること数年。30歳を前にふと、自分のキャリアはこのままで良いのか、世の中の同年代女性と比べて、年収は多いのか少ないのか、それに見合うスキルが身に付いているのかを把握しかねている。

ポイントは、ターゲットはいわば「転職予備軍」であり、「そのうち客」である点です。

彼女たち転職予備軍に対し、「今まで考えたことなかったけど、もしかしたら私の年収、低いのかもしれない」という問題提起を投げかけ(情報提供)、おのずと湧き上がってくるであろう「適正年収を知りたい!」という要求に導かれるままバナーをクリックさせる。ターゲットの感情メカニズムをしっかり衝いた見事な広告設計です。

余談ですが、逆にこの広告が「今すぐ客」をターゲットにしなければならないのであれば、アプローチはまた変わったものになったでしょう。

「今と同じ退社時間で、年収100万円上がります」といったところでしょうか。

4. おすすめの本

あなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をつかむ|神田 昌典著

お客も人間。であれば、人間の感情を考えてビジネスをしよう、という極めて常識的でありながら、それまで論じられることのなかった「感情マーケティング」という手法を生み出したダイレクトレスポンスマーケティングの第一人者、神田 昌典氏。そんな著者が中小企業5,000社で実践した、短期間で売上を上げるノウハウの実例が学べます。

確実に販売につなげる 驚きのレスポンス広告作成術|岩本 俊幸著

広告の父、デイヴィッド・オグルビィの遺した言葉「広告は販売につながらなければ意味がない」を信念に、優れた広告クリエイティブとは何かを、自ら行なったABテストの結果をふまえて徹底分析。センスや感覚に頼る必要のない、広告制作のイロハを学べる入門書です。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか。この記事では、レスポンス率が上がるバナーを制作する心得とテクニックについて述べさせていただきましたが、まとめると、ポイントは以下の5項目に集約されます。

①ネット広告を出す以前に、ビジネスに必要な下記3つの仕組み作りが必須である。

  1. 見込み客を効率よく集める。
  2.  見込み客を既存客にする。
  3.  既存客を固定客にする。

②ネット広告でモノを売ることは出来ないが、モノを売ることにつなげることは出来る。
③ネット広告の役割は「見込み客を効率よく集めること」である。
④「広告」と分からないよう「情報っぽさ」を追求し、続きをクリックさせる。
⑤獲得した「見込み客」を「既存客」にするために、感情的なつながりを持ち続ける。

この法則は、どんな業界・業種においても通用します。なぜならこの法則は「人間の感情」を相手に構築されたものであり、人間の感情にビジネスのカテゴライズは関係ないからです。ぜひ、あなたの関わっているビジネスでも実践してみてください。そして効果を実感していただけたら、これほどうれしいことはありません。

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