誰もが『記憶力が欲しい!』と切望したのは教育上のペーパーテスト前日ではないだろうか。参考書に蛍光ラインを引き・単語帳を作り・ひたすら丸暗記・小テストを繰り返す、1問でも覚える努力に思考を凝らしテストに挑んでいたはず。それがどうだろうか、いつのまにか大人になり学びから離れた環境でその時の記憶力が今も生かせているか?と言われたら『昔は覚えていたのになあ…』と自信が無い方はけっこう多い。

テストで優越を示されたように記憶力は個人差があり年齢とともに退化するのが自然だと考えがちだが、実はそうとも言えない。人間の記憶へのメカニズムが大きく解明され、知識だけでなく、思考力や意欲も関係していることが分かったのです。専門家の間では子供も大人も『記憶術』を見直すチャンスと言われています。今回は最新の誰でもできる記憶術を解説します。

とはいえ、難しいやり方はお断りですよね。意外にもやるべきは簡単なことばかり、記憶術のやり方を理解すれば誰でも東大生並みの記憶力を手に入れることができます。

目次




1.脳が記憶するメカニズム

1-1.記憶とは、命の危険から身を守る為のもの

大人になっても記憶力の向上は重要だと誰もが感じている。人間の記憶は脳内に分泌されるノルアドレナリンが左右しています。このノルアドレナリンは、命の危険を防ぐ為に働く神経伝達物質で、例えば強いストレス・痛み・うつを感じた時にいち早く分泌されるのが特徴。集中力を高める効果があり、これによって人は抱えきれないストレスから回避される仕組みです。ノルアドレナリンが与える効果から記憶とは、命の危険から身を守る為にそなわった機能だと現代では解かれています。

人はネガティブな時、心配性になり・事前に対策を考え、『先のことを準備しなければ』と考えます。この思考こそがノルアドレナリンによって脳が通常よりシステマチックになっている解釈ができるので、実戦では気持ちがネガティブで不安であるほど計算間違い、小さなミスが少ないのです。

1-2.短期間の記憶と長期間の記憶は脳の別の部屋にわけられる

人が記憶をする時『忘れない為にはどうすればいいか?』とも同時に考えています。これにはどう対処すべきか、2つの方法をあげるのでどちらを選択したいか考えていこう。

  • A.覚えたいことをひたすら繰り返し続け覚える方法
  • B.一旦覚えておいて、しばらく時間をおいて思い出す方法

この場合の良策はBの『一旦覚えておいて、しばらく時間をおいて思い出す方法』である。記憶力に自信がない人はAの『覚えたいことをひたすら繰り返し続け覚える方法』を選択しがちだが、覚えているうちに記憶を繰り返しても脳はなかなか覚えてくれない特徴があり、ある程度忘れかかったとところで覚えるのが記憶に残るのです。

Bのやり方ならば忘れかけた頃に思い出す作業を繰り返すことで記憶は強化され忘れにくくなります。

記憶力を強化する復習方法

覚えたことを毎日復習するのではなく、復習期間を一日後から三日後、つぎには一週間後と感覚をあけて復習するのがおすすめです。

思い出せない事柄を『あ!そういえば!』と思い出すことの方が印象もひときわ強いですよね。復習期間を長くすればするほど記憶は脳の長期間の部屋にいれられるので忘れにくくなります。短期間の記憶は脳の海馬に2週間あるとされ、それ以内は記憶に残らず忘れていきます。忘れたくない記憶は2週間以上覚えていることで長期的に覚えることができます。

1-3.記憶の種類は過去と未来にわけられる

人間の『記憶』は2種類ににわけられます。

過去|回想的記憶(かいそうてききおく)

過去の記憶は回想的記憶といい、一般的に記憶とはこの『過去』の事柄を示すと受け取られていることが多い。

未来|展望的記憶(てんぼうてききおく)

実は、人間にとって記憶とは展望的記憶の方が重要です。展望的記憶とは未来の記憶のことで、『あしたのスケジュール』『将来的なライフプラン』などがそれにあたります。これは前向きの記憶になり人間が生きる上での本質です。

1-4.現代社会での記憶の位置付け

『記憶力なんて必要ないインターネットがあるじゃないか。』この意見は現代人に多い、理由はインターネットの需要が増え『検索』という文明の利器を使った人にとって、重たい辞書を引き自分で文字を書くことが効率が良いと感じないからです。日本も含め海外の大学でも『なんでも持ち込み可』の試験は増えてるのが事実としてある。こうした社会の移り変わりによって『記憶術』に関してツールを使うことにたより衰えてしまった人は少なくない。

世界で初めて記憶術を発案したキケロの『弁論家について』

歴史上最古に記憶術を説いた人物は共和政ローマ末期の政治家マルクス・トゥッリウス・キケロ。彼は記憶術について言及する書を作成し、その分厚い書物の内容をすべて暗記していたともされ。彼は対話する上において、記憶力の良さは有利に働くと述べ「記憶術が役に立つ」と結論付けています。

キケロのように分厚い本をまるまる一冊暗記できる人は、そうそういない。しかし、インターネットが普及しても記憶力が高い人がいなくなったわけではありません。この記憶力が高いと言われるレベルがどういったものなのか全米記憶力選手権を参考に基準を知っておこう。これは、実際に行われ達成された記録にもとづいています。

  • 壁に並べられた約4102個の数字の羅列を30分で暗記した。しかも正確な順序で

 ▼全米記憶力選手権の記憶法

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彼らの脳が構造的に解剖学的に普通の人と違わけでもIQが高いわけでもありません。記憶する時に脳の使う部分が違うことがわかりました。では、彼らが記憶する時使用している具体的な脳の使い方を解説していこう。

2.これからの仕事で問われる『記憶力』はこう鍛えろ!

知識編重型の学力では、グローバル時代は生き抜けない。わかっちゃいるけど、どうすればいいのか、記憶術の最前線で活躍する全米記憶力選手権優勝者からヒントを探ってみよう。

⑴チャンキング

チャンキングはとは物事をグループ化にわけ、そこからイメージをスライドして物事を覚えていく記憶術です。大きなカテゴリーからスライドすることで思い出していくので脳の負担を減らしてより多くのことを派生させておぼえることができます。

▼大きなカテゴリーからそのなかで記憶をスライドさせていく方法です。

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チャンキングの具体的例

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『切るもの』の大きなカテゴリーのなかには
>はさみ・カッター・ほうちょう・つめきりが所属しています。

『掃除するもの』の大きなカテゴリーのなかには
>ほうき・そうじき・雑巾・ちりとりが所属しています

⑵符号化(ふごうか)

覚えたいことを非常的なことに置き変えて共感覚を使った記憶術です。符号化されることで記憶を圧縮することが可能になります。覚えたいことにエピソード要素を含むことで人はそれを忘れなくなります、そのエピソードが、卑猥でばかばかしいものであればあるほど忘れにくくなります。

空間記憶ナビゲーションを駆使して普段の生活に身近な情報で記憶を仕立てることで一生ものの記憶術なのです。

⑶マインドマップ

覚えたいものをイメージします。目を閉じてはっきりと思い出せるほどの記憶です。さらにそれを紙の上で再現し、色や絵を記入していくことで記憶の定着力がアップする記憶術です。

記憶したいものを中央におき、そこから放射状に情報をつなげていくことで、思考を整理し、発想をゆたかにし、記憶力を高める思考を展開することができます。複雑な概念もコンパクトに表現でき、非常に早く理解することができます。マインドマップは頭の使い方・学び方を鍛える方法です。

人の記憶は、一字一句おぼえるのは難しいですが、話題とともにおぼえることは誰でもできます。

3.記憶の敵は気が散ること

『記憶の敵は気が散ることである』と「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」の著者、ジョシュア・フォアは述べています。

記憶にとって最大の敵は気が散ることで記憶力は生まれつきと思われますが、そうではありません。記憶力は学習の賜物です。—-米国のメモリ選手権を獲得したサイエンスライタージョシュア・フォアの言葉

記憶において、ぼーっとしていたり何気なくダラダラとスマホを操作している時間は集中していないので何も記憶をしていない状態と言えます。なまけていることで誰もが秘めている最大の能力を無駄にしているといえるのです。

4.記憶の定着には質の良い睡眠が不可欠

『せっかく勉強したことを忘れたくない』場合は睡眠をとることは必須事項。なんらかの試験が控えているのであれば寝ずに勉強に打ち込むことは記憶が定着してくれないのです。睡眠についての研究は日本が最も進んでおり、睡眠の種類は深いノンレム睡眠・浅いノンレム睡眠・レム睡眠の3つに分けられそれぞれ記憶に影響する役割が違います。

4-1.深いノンレム睡眠|脳を休める

眠りたての1時間ほどで訪れるのが深いノンレム睡眠状態で、成長ホルモンが一気に分泌され脳の休息時間になります。理想的な時間帯は、PM10時~AM2時くらいの間です。

4-2.浅いノンレム睡眠|記憶を強化

1時間以上たつと浅いノンレム睡眠が訪れ、起きていたときの行動的情報を整理します。例えば自転車の乗り方、泳ぎ方などの情報が記憶として強化されます。

4-3.レム睡眠|記憶の定着

記憶の定着には6時間以上の睡眠が理想的です。レム睡眠ノンレム睡眠を約90分周期で一晩に4~5回、一定のリズムで繰り返します。レム睡眠は感情の不快を取り除きいつ・だれと・どこで・何をしたなどの記憶を図書館のように綺麗に整理整頓し定着させます。

5.おすすめの本

ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由|著者ジョシュア・フォア

最先端の脳科学や一流のプロたちの技術習得の秘訣を学び、全米記憶力選手権で優勝するまでの1年を描いた全米ベストセラーの話題作。著作本人が2012年2月に『誰でもできる記憶術』をテーマに20分のスピーチをしたことでさらに認知度を高めます。彼はジャーナリストなのでネタとして記憶力選手権に出場し、その会場をかなりつまらない会場だったと述べていることが、彼のキャラクターを感じさせ非常に人気が高い理由が理解できます。日本のアマゾンでも星4つ半と高評価。ドキュメンタリータッチに書かれているので難しいビジネス本とうって変わって格段と読みやすいです。

記憶に自信のなかった私が世界記憶力選手権で8回優勝した最強のテクニック|著者ドミニク・オブライエン

彼もまた、ジョシュアと同じ経験をもつ記憶力の持ち主。彼が参加している記憶力選手権は、イギリス発祥の競技会で、1991年から毎年開催され、3日間で10種目の競技を行い記憶力世界一の座を争います。現在では世界40カ国まで浸透し、記憶力に興味のある方の中でもかなり有名です。(日本でも奈良県・東京都が開催地)。記憶力とはイメージ化が重要だと称しているだけに内容もかなりわかりやすいのでお子様でも理解できるかと思います。

6.まとめ

実績のある記憶術は日常のなんでもないことでしたね。記憶の大敵も知ることで集中力を削いでいる自覚を持つこと大切。それを知らずに長時間勉強しても記憶することへはつながらないのだ。勉強に限らず、スポーツでも経営でも、成功している人はみな、記憶力がある人たちです。『成し遂げられる人』とは記憶力のある人だと言ってもいいでしょう。多くの人はながらスマホをしているうちに自分の目標や夢を後回しにしがちですが、成し遂げる人は毎日その夢や目標を意識して行動し続けます。自ずと結果が違っってくるのは言うまでもありません。記憶術も楽しいことに変えていくかがポイント。習慣化することが効果的です。