突然ですが、あなたには夢がありますか?

「英語が話せるようになりたい」「司法試験に合格したい」「全国レベルの大会で優勝したい」…etc.「いつか叶えたい」願い事を、誰もが胸の奥底に秘めているのではないでしょうか。

驚かれるかもしれませんが、私たち人間には、直面するさまざまな問題に対して自ら答えを見つけ出せる能力が生まれながらに与えられていると言われています。まさに天賦の才、というものです。

しかしながら、多くの人がそのような偉大な力を持ちながら、夢や目標を達成できずにいます。そして、ここぞという場面でいつも以上のパワーを発揮し、大金星をあげることを「まぐれ」「棚からぼた餅」的な捉え方をする人も少なくありません。

ネットで情報を引き出しやすくなり、知識を得ることがいとも簡単になった昨今。反面、相矛盾する見解もまた巷に溢れているため却って混乱し、思い切って行動することの難しさを感じている人が増えているようです。

しかし繰り返すようですが、人間には、あらゆる困難を乗り越える能力が備わっています。相矛盾する見解やさまざまな葛藤に打ち勝ち、夢や目標を達成できる人とできない人の違いはただ一つ、その潜在能力にアクセスする術を知っているか知らないか。

本記事では、あなたがあなた自身の中に眠る「天与の才能」を発見し、人生のあらゆる場面でそれを活用できるようになる方法をお教えします。

目次




1. 潜在能力を引き出して成功を掴んだ実例

「誰もが秘めたるパワーを持っている」と言われても、ピンとこない人もいるかもしれません。そこでこの章では、無意識下の能力を発揮し成功を掴んだ人の実例をいくつかご紹介しましょう。モデルケースを知ることで、あなたにとって「潜在能力」が身近な存在になれば幸いです。

 1-1. スポーツ選手

一流のスポーツ選手にとって、緊張感をコントロールし集中力を高めるためのメンタルトレーニングはつきもの。ここ最近活躍している現役選手の中でも、メンタルの強さが特に際立っているのがフィギュアスケートの羽生結弦選手ではないでしょうか。

2014年ソチオリンピックでの金メダルに始まり、2015-16年シーズンでは歴代最高となるショート・フリープログラム合計得点330点をマーク。自ら打ち立てた世界記録を立て続けに突破した活躍ぶりは記憶に新しいところです。

「練習でできているレベル」は当たり前、試合のたびに進化する――そんな羽生選手の鋼の精神力を支えているのが、「発明ノート」と呼ばれる練習日誌です。

ノートに書かれているのは、たとえばジャンプの軌道といった技術的なことからちょっとした気持ちの変化まで、単なる日記ではない、いわば「データの集積」に近いもの。

羽生選手はこのノートの役割について、記録することでやるべきことを潜在意識に刻み、意識しなくても反射的に再現できるようにしていると言っています。それに加えてあの負けん気の強さですから、彼の中では「練習通り」+「勝つこと」がしっかりイメージできているのでしょう。広いリンクに一人立つ姿から、試合会場の空気を支配しきっているオーラさえ漂ってくる佇まいは、そうした日々の積み重ねに裏打ちされたものだと言えます。

 1-2. 経営者

京セラ名誉会長、日本航空CEOを歴任した「経営の神様」稲盛和夫氏。稲盛哲学の真髄の一つとも言えるのが「強く持続した願望を持つ」という信念です。

「何が何でも目標を達成したい」という気持ちを、どれくらい強く持ち続けることができるか。――稲盛氏にとっては、この思いの強さこそがビジネスの成否を分かつ鍵となっているそうです。

単なる根性論ではなく、「潜在意識」の持つ力を強く信じる哲学が稲盛氏にはありました。出発点は、資金も社員数もまだ零細規模に過ぎなかった京セラの創業期時代。稲盛氏は年中、朝起きてから夜寝るまで、部下たちに自分の夢を語りかけていたそうです。

繰り返し繰り返し、寝ても覚めても自分の願望を唱えていくうちに、自身は言うまでもなく社員もいつの間にかその願望を信じ始め、目標の実現に向け努力を惜しまないようになっていきました。

身体と心に染み込むほど言い続けることで、その信念はやがて願望ではなく無意識のゾーン、つまり「自分にとっての常識」と変化します。

社会情勢や経済状況がたとえ難しい局面にあっても、悪条件に打ち克つ凄まじいまでの経営理念。まさに「潜在能力」をビジネスに転化させた事例であると言えるでしょう。

2. 潜在能力を秘めている人の共通点

潜在能力を引き出すには、ある「3つの姿勢」が不可欠だと言われています。夢や目標の実現にはあらゆる不安や困難、葛藤がつきまといます。そうした行き詰まりを自ら突破し、解消できる人こそが潜在能力を引き出しやすいもの。そんな人の共通点を学び、取り入れてしまいましょう。

 1-1.マインドがオープンな人

行き詰まっている時ほど、一つの考えや過去の体験に固執しているもの。それが苦悩と混乱を生み出す悪循環に陥りがちです。そうしたストレスを解き放ち、冷静になることで知覚力と感受性が飛躍的に向上すると言われています。

では、どうすればオープンな自分に出会うことができるのでしょうか。

一つに「柔軟に考える」クセを持つこと。1つの問題に対し、あらゆる方面から解決策を見出そうとする習慣を持ちましょう。

次に「探究心」を持つこと。知りたがりの人は、ものごとをよく観察し、掘り下げようとします。その探究心が問題解決の糸口を探り当てる訳です。

最後に「無意識」を信頼すること。人は物事に行き詰まった時、常に「意識の上」で何とかしようとあがきます。ですが新たな突破口は、意識上ではなく意識の下、つまり無意識のゾーンにあるもの。クリエイティブな作業をしている時、ふと素晴らしいアイデアがひらめくことを「降臨した」と表現する人がいますが、そういったインスピレーションは、こんがらがった思考の中ではなく、リラックスしたアルファ状態の脳にこそ宿ると着目するべきです。

 1-2. 「生み出す」発想ができる人

あなたも経験があるのではないでしょうか。人は行き詰まった時、その辛い状態から逃れることをゴールにしがちです。たとえば、苦手な上司と一緒のプロジェクトになった時。上司の参加する会議に遅れて出席したり、話せばすぐに済む議題も、わざわざメールなどを使ったり。相手との接触をできるだけ避けることに囚われて、本来の目的であるプロジェクト完遂がつい疎かになってしまったことはないでしょうか。

「生み出す」発想ができる人はこんな時、新人をプロジェクトに招き入れ、上司との潤滑油として活躍してもらうことを企てます。新人にとっては経験値となり、プロジェクト自体も進捗する…といった「新しいオプション」の発明です。

そういった発想ができる人の共通姿勢の一つに「チャレンジする」という行動指針が見受けられます。先ほどの例で言えば、上司との人間関係という単純なようで複雑化した問題の中にも「2人の問題でなく組織の成長の糧としよう」という側面を見出した点。その結果、新人投入という思い切った手段を講じることを決めた訳ですから、やっかいな状況下でもネガティブにならず、挑戦を楽しむ前向きさがある人は強いでしょう。

 1-3. 粘り強い人

「夢を諦めなかった人だけが、夢を叶えることができる」というのは、多くの先人たちが残してきた言葉です。ですがこれを胸に刻んで行動できている人は、果たしてどれだけいるでしょうか。

「根気がないから無理」「やり続けられること自体が才能なのでは」といって諦めないでください。粘り強さは性格ではなく、身に付けることができるテクニックです。次の2つの条件を心に留めて行動することで、粘り強さを手に入れてください。

一つは「勇気」を持つことです。

何らかの行動に移る時、失敗や批判を不安に感じない人はいません。ですがそれらのリスクを負い、果敢に挑む人だけが成功への切符を手にすることができます。恐怖心に負けない勇気を大切にしてください。

もう一つは「想像力」です。

粘り強い人は、未知の世界でしかない未来をリアルに思い描くことができます。まるでタイムマシンに乗ってその目で見てきたかのように、です。具体的に状況を説明することも可能です。

つまりそれだけ、夢の実現性を確信しているのでしょう。信念は現実を引き寄せます。逆に言えば、想像ができない未来は形にすることもできません。

3. 潜在能力を引き出すための4ステップ

それでは、潜在能力を引き出すには具体的にはどうすれば良いのでしょうか。

脳本来の力を信じ、天から与えられた才を活用するための学習の流れとして「フォトリーディング」の開発者としても知られる能力開発の権威、ポール・R・シーリィの提唱する「ナチュラル・ブリリアンス・モデル」を用いて紹介していきます。

これまで限界だと思っていたレベルを大きく飛び越えて、最高の人生を生きることを可能にするメソッドを、ぜひ手に入れてください。

 3-1. 解放する

人は緊張でがんじがらめになっている時よりも、リラックスしている時の方がはるかに良いパフォーマンスを発揮できます。これは肉体的にも精神的にも認められている生理現象であり、体が緊張すると、大きな筋肉組織しか動かせなくなり繊細な動きができず、ぎこちなくなります。また意識上の問題にとらわれてしまい思考力も低下するでしょう。

そこで、緊張を解きほぐし、リラクゼーションへいざなうテクニックを持っておくことは非常に有益です。その近道の一つとして、まずは生理機能から。心理機能をリラックスさせるよりも生理機能に変化を与える方が、肉体的・精神的硬直から解放させる上で適していると言われています。手順は以下の通り。

・大きく深呼吸し、体の力を抜く。
・呼吸のリズムを一定に保つ。
・息を吸ったら途中で止めずに、そのまま吐き出す。
(この呼吸のサイクルを意識し、しばらく丁寧に続ける)
・30秒たったら目を閉じ、そのままのリズムを保っていく。

呼吸を整えると、自動的に肉体と精神の両方をリラックスさせることが可能です。肉体と精神が変化すれば、感情もポジティブになるはずです。

そして、「この手順を身に付けたら自分は最高の状態に仕上がっている」ということを条件反射的に意識づけしてください。心理学用語で言う「アンカリング」という方法です。これを日常に取り入れることで、緊張状態からすぐにでもリラクゼーション状態に誘導することが可能になります。

 3-2. 感知する

前項で紹介した第1のステップである「解放」によってストレスから解き放たれると、視覚や聴覚といった感覚が研ぎ澄まされていることに気付くでしょう。すると、脳のあらゆる機能がフル稼働しはじめ、目標達成に至るまでの意思決定一つひとつが適切に下せるようになります。

わかりやすい例で言うと、文書化された情報を1秒間あたり1ページ以上という速度で処理することができる「フォトリーディング」も、その鋭敏な感覚システムを活用した事例です。

また、聴覚も磨くことができます。私たちは普段、耳でキャッチできる音のほんの一部しか聞いていないと言われています。たとえば突然外国に行って外国語のシャワーを浴びたとしても、母語に存在しない音はその音自体が耳に入ってきません(よってうまく発音できません)。ですが訓練することで外国語が聞き取れ、口をついて出てくるようになるのは、実は聴覚図を拡大していることに他ならないということです。

こういった感覚と同列で「直感」も鍛えることができます。自分の内なる世界を見つめ、肯定し、探究することで、意識下で沸き起こるインスピレーションの見過ごしを防げます。

こうして理屈では説明のつかない感覚力を高めることで、顕在化していない能力のアドバンテージはよりステージアップしました。さらに次のステップへと進みましょう。

 3-3. 反応する

起こった変化に対し、成功のためにとるべきはポジティブな方向に前進するような判断と行動です。それが「反応」と呼ばれる第3のステップ。

人は行き詰まった時、2つの相対する選択肢の間で揺れ動きます。その時、判断軸となるのは、たいてい「やってはいけないことは何だろうか」というネガティブな思考に偏っているという事実にお気付きでしょうか。

「失敗してはいけない」「上司や同僚、仲間に迷惑を掛けてはいけない」「会社に損失を与えてはいけない」「取引先に嫌われてはいけない」…得てして、こういったメッセージが頭の中を駆け巡っているものです。

ナチュラル・ブリリアンス・モデルが提唱しているのは、脳にまったく別の質問をする習慣をつけましょう、ということ。

「私が欲しいものは何か?」

その答えを探し始めたとたん、問題はまったく違う方向に舵を切るはずです。

行動を起こした時点で、恐怖心の99%をすでに克服しています。目的に向かうことで、達成には何をすれば良いかが見えてきます。

 3-4. 確認する

第3のステップ「反応」を起こしたことに安心して歩を止めてしまっては、残念な結果になりかねません。たとえばうまくいかなかった場合には挫折感しか残らず、挑戦は苦痛となり「二度とやりたくないもの」という烙印を自分の中で押してしまいがちです。苦痛として残るだけならまだ良いのかもしれません。ひどいケースになると、行動したこと自体を忘れてしまい、経験値としてすらインプットされない、ということも。

そこで、必ず最後のステップ「確認」を行なうようにしましょう。

たとえ目標が達成できなかったとしても「確認」によってポジティブな変化が生まれれば、学習できたという“成功体験”を得ることができます。しかしながらこの「確認」をしなければ、自分の行動は非建設的な行為だったと否定するだけに終わり、成長するチャンスは失われたままです。

認めたくない自分の暗部や影に積極的に目を向けてください。また反面、ベストを尽くしたのであれば、その努力については自分を褒めてあげてください。ただの批判をするのではなく、自らに建設的なフィードバックをして次への足掛かりとすることが一番重要です。

このように、第4のステップ「確認」で学んだことをすべて統合したら、再び自分をリラクゼーション状態へ「解放」して、次の発展に備えます。つまりこの章で説明した4段階のステップは、人生をより輝かせるための生涯学習における「サイクル」パターンという訳です。

4. 部下や組織の潜在能力を引き出すテクニック

潜在能力を引き出すコツを学んだら、それを人のために活用してみましょう。部下が高いパフォーマンスを発揮できれば、その組織はぐんと強くなるはずです。

この章ではいよいよ、潜在能力をビジネスの現場に落とし込むコツを伝授していきます。

 4-1. 目標を設定する

何はなくとも、目標設定が大切。ですが頭ごなしに「コレをやりなさい」という指示を出してもうまくいかないでしょう。目標設定にもテクニックが必要です。

 -本当に叶えたいと思える長期目標を設定する

たとえば「社会貢献」は素晴らしい言葉ですが、目標としては適していない場合があります。「言葉が大きすぎる」のでしょう。目標を設定する際は、その目標を実現すると部下にどのような好影響が及ぼされるのか、という観点でよくよく吟味しなくてはなりません。具体的かつ本人の成長につながるような目標を立てるようにしましょう。

 -長期目標から短期目標を設定する

ダイエットで例えると、半年で10kg落とすなら、今月はマイナス何kgを目指す、といった具合です。できるだけ短期的な目標にブレイクダウンすることで、実現イメージを持ちやすくなります。

 -短期目標から毎日の計画を設計する

目標を「todoリスト」にしてしまうことで、目標の実現はさらに近づきます。日々やるべきことを誠実にこなす×期日まで続けさえすれば=達成というゴールを迎えられる、という計算式を部下と共有しましょう。

 -小さな成功を毎日積み重ねる

前章で述べた、潜在能力を引き出す第4ステップ「確認する」の実践です。毎日決めたtodoリストができたら、それは一つの目標達成。日々の業務が終わったら振り返りの時間を持つようにし、できた自分を褒める習慣を持つようにしましょう。そうした小さな成功の積み重ねが、明日以降の発展を支えていきます。

 4-2. セルフイメージを持たせる

設定した目標を達成している自分をイメージすること。それを大切にしましょう。人間は、意識下、つまり潜在意識の中に刷り込まれたイメージに従って行動する生き物です。つまり、成功しているセルフイメージを持たなければ行動は伴わないということ。

しかしながら、困難を目の前にすると心が折れてしまうこともあるでしょう。上司には、そうした部下のサインに目を配り、健全なセルフイメージが損なわれないよう助言をする洞察力が求められます。

 4-3.成功体験をアンカリングする

日々の業務活動の中でうまくいった、あるいはこうすればトラブルを回避できた、といった気づきを得られたら、必ずメモに残すようにしましょう。成功に結び付くありとあらゆる情報を脳内データに記録することで、「こう行動すればうまくいく」といった成功パターンを刻み込むような感じです。

インプットの数が増えれば増えるほど、場面に応じて反射的に「成功につながる行動」を起こせるようになります。その行動をアンカリングしてあげることが大切です。

5. おすすめの本

最後に、潜在能力を引き出すテクニックを学ぶ上での必読書をご紹介いたします。

『潜在能力でビジネスが加速する――才能を自然に引き出す4ステップ・モデル』ポール・R・シーリィ 著、神田昌典 監修、今泉敦子 翻訳(フォレスト出版|2016年2月刊)

日本に「フォトリーディング」を紹介したポール・R・シーリィ博士による新著。氾濫する情報社会においていともたやすく得られる「知識」と、相矛盾する見解や内面に沸き起こる葛藤から一歩踏み出すことが難しいとされる「行動」のギャップを解消する――潜在能力は、すべてこのメソッドで引き出されると体系づけられています。どの項も具体例と図説を交えてわかりやすく展開されており、この上なく実用的な一冊。

『あなたの潜在能力を100%引き出すたった1つの方法』生田 知久 著(SBクリエイティブ|2013年11月刊)

脳科学の研究家であり、企業研修から能力開発セミナーまで年間300回を超える講演をこなす生田知久氏が潜在能力を引き出す方法を伝授。大切なのは「イメージ力」。頭の中に映像を作りだす」ことで「できなかったことが、できるようになる」という力強い言葉は、多くの人に行動する勇気とポジティブな未来予想図をもたらしてくれます。

6. まとめ

いかがでしたでしょうか。潜在能力というと、ギリギリまで追い込まれた時に奇跡を起こす超能力…といった“非科学的”なイメージをお持ちの方にとっては、目からウロコの内容だったのではないでしょうか。

潜在能力を引き出すには、ちゃんとしたテクニックがありますし、普段から心がけるべき行動が確かに存在します。その行動の第一歩が「なりたい自分」を具体的にイメージし続けるというもの。あなたにとってこの記事が、ビジネスの現場で活かせる実用的なハウツーとなれば幸いです。