社会人たるもの、何かとプレゼンをする機会が多いと思います。
一方で、
「上手くプレゼンする方法が分からない」
「プレゼンが苦手で憂鬱」
「相手に納得してもらうには何を言ったらいいのか?」
など、苦手意識を持っている方も少なくないのではないでしょうか。
とはいえ、避けて通ることも難しいプレゼン。何とかして克服したいものです。
そこで今回は、『プレゼンの構成を考えるためのポイント』をご紹介していきたいと思います。
目次
1.すぐに活かせる5つのプレゼン構成テクニック
プレゼンのテクニックは多数ありますが、全て身に付けるには時間がかかってしまいます。
そこでまずは、プレゼンの基礎とも言える「構成」を考える上ですぐに使えるテクニックをご紹介します。
構成はプレゼンの“柱”といっても過言ではありません。構成がしっかりしていないと、伝えたいことが正しく伝わらなくなってしまいます。
ここでは、明日からでも使えるテクニックを集めましたので、是非参考にしてみてください。
代表的な構成の「型」を使ってみる
分かりやすいプレゼンの構成は、センスがなくても作れます。
代表的な「型」があるので、それに当てはめれば、自ずと分かりやすい構成を作ることができます。
「型」は大きく分けて3つ。
■SDS(Summary Detail Summary)法
- Summary[要約]:プレゼンの趣旨を要約し、短く伝えます。
- Detail[詳細]:(1)の要約について、より詳しく伝えます。
- Summary[再び要約]:言葉を変えて、要約を復唱します。
<例>
この冷蔵庫には家計を助ける3つの機能があります。(1)
それは、自動解凍機能・食材の重さに合わせて自動的に冷却温度を調整する機能・賞味期限が近づくとアラームが鳴る機能です。(2)
これらの機能により、無駄な出費を抑えることができます。(3)
■PREP(Point Reason Example Point)法
- Point[要点]:プレゼンのポイントを簡潔に伝えます。
- Reason[理由]:(1)についての理由を詳しく説明します。
- Example[例]:具体的な例を挙げます。
- Point[再び要点]:言葉を変えて、ポイントを復唱します。
<例>
この冷蔵庫は、家計の無駄を省くことができます。(1)
なぜならば、賞味期限が近づくとアラームが鳴る機能があるからです。(2)
自動でアラームが鳴るため、うっかり賞味期限を切らしてしまったり、再び買い足してしまうといった事態を避けることができます。(3)
ゆえに、節約につながります。…(4)
■DESC(Describe Express Suggest Consequence)法
- Describe[描写]:客観的に状況を描写します。
- Express[表現]:主観的な意見・問題点を表現します。
- Suggest[提案]:(2)に対する解決方法を提案します。
- Consequence[結果]:(3)によってもたらされる結果を述べます。
<例>
景気の影響もあり、極力出費を抑えたいと考える家庭が増えてきています。(1)
しかし、節約できる部分に気付いていない家庭も少なくありません。(2)
そこで、「収納されている食材によって自動的に冷却温度を調整する」という機能のついた冷蔵庫を提案します。(3)
この機能が節電に繋がり、結果的に家計を助けることが期待できます。(4)
余分なトピックを捨てる
いわゆる「一点集中」です。何かを強く主張したいのであれば1つに絞り、その他の要素を一切主張しないという方法を取ってみましょう。
聞き手からすれば、主張が増えれば増えるほど言いたいことが伝わってきづらく、混乱してしまいます。
そのためには、「余分なトピックを捨てる」ということを念頭に見直し・練習をしてみましょう。
企画をしている時点では、様々なアイデアが浮かんできてアレもコレもと、つい盛り込んでしまうもの。
しかし、改めて目を通すと無駄な主張や無駄な論理が書かれていることに気付くことができると思います。
何を一番主張したいのかを今一度思い返し、求めている行動を相手に促せるような構成にしましょう。
インパクトのある数字を使う
事実と数字は、どんなものよりも客観的なデータです。
主観的なものよりも強い信頼性を持っています。使える数字がある場合は、積極的に取り入れてみましょう。
グラフを作って視覚化することも良いかもしれません。 論理的になっていなければ、納得度が低いプレゼンになってしまいますので、主題を論理的に証明するために数字を用いることも有効です。
緩急をつける
ダラダラと話をしても、聞き手は興味を持ちづらいもの。それを打破するヒントは、日本の伝統芸能である「能」にあります。
能の劇作方法は「序:静かにゆったりと始まる」「破:突然ドラマチックに主要部分が展開する」「急:急速に完結する」という3部構成になっています。
これをプレゼンの構成に活かすことで、テンポ良く、聞いていて飽きないプレゼンにすることができます。
インパクトのある導入をつくる
プレゼンは、初めの一言で全てが決まると言っても過言ではありません。
ですから、インパクトのある「つかみ」をしたいものです。
そこで、聞き手の心を掴むための3つのポイントをご紹介します。
■<は>のつかみ 聞き手をハッとさせるつかみです。
例えば、「私は常に隣の奥さんと一緒の時間を過ごしています」など、思わずなんで!?と言ってしまいそうな意外性のある内容を盛り込みます。
■<ほ>のつかみ 聞き手がホッと和むようなつかみです。
例えばふくよかなプレゼンターが、「私は、自分の体重以外にも気になっていることがあります。
それは日本経済です」と言うなど、自分のキャラクターや心情を正直に言い、親近感を感じてもらう方法です。
■<ふ>のつかみ 聞き手がふと考えさせられるようなつかみです。
「1年後に地球がなくなるとしたら、何をしますか?」など、聞き手が一緒になって考えてしまうような質問を投げかけることで、一体感がうまれ、話に積極的に参加してくれるようになります。
2.課題別プレゼン構成のポイント
プレゼンというと、「話す」ことに課題を抱えている人が多いという印象がありますが、実は「構成」の部分に悩みを抱えている人の方が多い、というデータがあるそうです。
では、具体的にどのような悩みを抱えている方が多いのでしょうか。
そして、それを解決するためにはどうしたら良いのでしょうか。
課題別にプレゼン構成のポイントをご紹介します。
不要に長くなってしまう
一般的に、「1分間に300文字のペースで話す」「2分で内容を一区切りさせることで飽きられない」と言われています。
しかし、プレゼンでは相手に伝えたいことをあれもこれもと盛り込んでしまいがち。
結果話が長くなったり、繰り返しが多くなったりしてしまいます。それでは聞き手が退屈してしまう可能性が否めません。
そこで、ポイントを絞り込んで不要なものは捨てる勇気を持ちましょう。
重要な部分には、分かりやすいキーワードやキャッチフレーズを作ると間延びせずに印象付けることができます。
また、どうしても長くなってしまう場合には、聞き手にとって身近な喩え話などを織り交ぜると良いでしょう。
相手の感情を動かせない
プレゼンの成功は、「受け手側の感情を動かすこと」と言っても過言ではありません。
もちろん、話し方によるところも大きいのですが、構成でも相手の感情を動かせるテクニックがあります。
それは聞き手の期待感を高める、ということ。最初の段階で期待感を高めておけば、最後まで興味をもって聞いてもらうことができます。
聞き手の期待感を高める具体的な方法としては、「なぜ?を語る」が1番有効です。
もう少し分かりやすく言うと、初めに「なぜあなたはこのプレゼンを聞く必要があるのか?」を語っておくのです。
例えば、「このプレゼンを聞かないと、大きなチャンスを失うことになる」「このプレゼンを聞けば、より良い生活を手に入れることができる」などです。
このように、プレゼンを聞かずにはいられなくなる理由を冒頭で語ることにより、「このプレゼンは真剣に聞かなければ!」と相手の感情を動かし、自分の話に引きこむことができます。
印象に残せない
「テーマ」「構成」「話し方」を見直してみても特に悪い点はないのに、何だか印象に残らない…というケースもあると思います。
そんな時は、要所要所でできる限り「強い言葉」を織り交ぜてみましょう。
人は、強い言葉・記憶に残る言葉・何度も口ずさんでしまう言葉に惹かれる傾向があります。
それを上手く使いましょう。
例えば、「失敗する」でなく「破滅する」、「~で成功する」ではなく「~で歴史を作る」、「決意する」ではなく「覚悟を決める」といった具合いです。
重要な場所で取り入れるだけで、相手の記憶に話の内容を刻むことができます。
3.著名人に学ぶプレゼン構成例
世の中には、「プレゼンの名手」と呼ばれる著名人が多々います。
プレゼンの構成が上手くいかない、という方は彼らを構成をマネてみることからスタートするのも手。
はじめはマネでも、徐々に自分の色を盛り込み、ブラッシュアップすることができるはずです。
ここでは、プレゼンが上手いと言われている著名人たちの構成の特徴をご紹介していきます。
スティーブ・ジョブズ
言わずもがな、プレゼンの名手と言えばスティーブ・ジョブズでしょう。
彼の特徴と言えば、徹底的にシンプルであること。話し方もそうですが、プレゼンの構成も極めてシンプルです。
基本的には、「現状の問題点を指摘し、解決策を提示する」のみ。
彼は、アップル社の製品と同様に、プレゼンにおいても「シンプルであること」に情熱を注ぎました。
不要な物を極限まで削ることで、必要な物を明快に伝えています。
サイモン・シネック
マーケティング・コンサルタントである、サイモン・シネック。
彼の「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」という講演の中で、「情報の順番を逆にする」というテクニックが紹介されています。
つまり、「何を」をアピールするのではなく「なぜ」を先に話す、ということ。
つい自社製品やサービスの良い部分ばかりをアピールしてしまいがちですが、「なぜ」その製品やサービスを開発したかという点に注目して話すことで、聞き手の心を動かすことができるというテクニックです。
このテクニックはとても単純ですが、聞き手を引き込むチカラを持っています。
孫正義
プレゼンの達人とも呼ばれ、奇跡のような企業提携を世界中で実現してきた孫正義。
彼のプレゼンの中で見られる特徴の1つが、「大切なことを繰り返す」という点。
基本テクニックではありますが、基本に忠実なプレゼンだからこそシンプルに言いたいことを伝えられているのではないでしょうか。
孫正義の場合、プレゼンの冒頭で主張を端的に伝えます。その際、なぜ主張するのか根拠も併せて伝えることで、聞き手の納得度を上げます。
そして、ひと通り話を伝え終わったら、もう一度主張を伝え、聞き手が自分の中で情報を整理して納得できるような構成にしています。
4.プレゼン前に確認! チェックリスト
プレゼンの構成ができたら、まずは自分で客観的に見直してみることが大切です。
プレゼンのプロと言われる人ほど、チェック・事前準備に時間をかけています。
あのスティーブ・ジョブズも、プレゼン前のリハーサルに2日費やしたと言われています。
とはいえ、完全に第三者として見直してチェックするのは、なかなか難しいもの。
そこでチェックリストを用意してみました。ぜひこのチェックリストに沿って、客観的に見直しをしてみてください。
【導入】
- プレゼンの目的は具体的に明示されているか。
- 最初に全体像や流れを伝えているか。
- 聞き手の関心や興味を引き出せているか。
【本論】
- 流れが自然で矛盾はないか。
- 情報量は適切か。
- 時間配分は適切か。
- 分かりやすい説明がなされているか。
- データや具体例は適切か。
- 重要ポイントを強調しているか。
【結論】
- 全体の要約と再度強調はできているか。
- 聞き手への利益が明確になっているか。
5.プレゼンの本質とは?
プレゼンターは、良いプレゼンをするために様々な準備をします。
うまく自分の主張を伝えられるか、不安も感じるでしょう。
しかし、ちょっと待ってください。プレゼンとは自分の主張を発信することが最終ゴールなのでしょうか? それは少し違うと思います。
では、プレゼンの本質とは何なのでしょうか。 プレゼンは、単なる説明や解説ではありません。
言うならば、「自分の主張を聞き手に理解してもらい、納得・共感を得ることで、自分が期待する行動を起こしてもらう」こと。
そう考えると、まずはプレゼンの最終結論・最も重要なメッセージを一言で言えるくらいシンプルに整理しておくことが大切です。
というのも、本当に伝えたい主張を明らかにして、聞き手の記憶に深く刻みつける必要があるからです。
さらに、それを聞き手が理解できる内容にする、ということがとても大切です。
自分は何週間もかけて準備をしていますから、プレゼンの内容やそれに関する知識もしっかり理解している状態です。
しかし、聞き手はプレゼンの場で予備知識なく話を聞くことに。
そのため、シンプルな構成・分かりやすい内容を心掛け、聞き手がストレスなく理解できるようにしなければなりません。
そして、聞き手に納得・共感してもらうという部分。プレゼンで重要なのは、相手に納得した上で「この提案を受けてみよう」と思ってもらうこと。
そのためには、自分の主張を論理的に説明する必要があります。
そこに加えて、「この人なら任せられそうだ」「この人を信じてみよう」という信頼も勝ち取ることが必須。つまり、「論理的な説明」と「情熱」の両方が必要になります。
聞き手にそうした心理的な変化をもたらし、自分が期待する行動を起こしてもらうためには、プレゼンのゴールを明確に定めておく必要があります。
聞き手にも明確に伝えるために、締めくくりの部分に具体的なアクションプランなどを入れておくのも良いでしょう。
自分からのみ発信するのではなく、聞き手と双方向のコミュニケーションを発生させる。これが真の「プレゼンテーション」と呼べるのではないでしょうか。
6.おすすめの本
さて、ここまでプレゼンの構成について色々とご紹介をしてきました。
しかし、まだまだ構成をするための秘訣やポイント、知っておくと便利なことはたくさんあります。
そこで、プレゼン構成を考えるにあたって役に立つおすすめの書籍をいくつかご紹介しましょう。
プレゼンテーションzen|著者:Garr Reynolds
プレゼンテーションのデザインと実施についての第一人者である著者による本。
ビジネス本というよりも、禅の精神を引用しており、いかにして簡潔でシンプル、明快で心を惹きつけるプレゼンテーションを行なうべきかが分かる本です。創造的な実例やアイデアも紹介されています。
プロフェッショナル・プレゼンテーション| 著者:土井哲、高橋俊介
マッキンゼー出身で、リーダーや経営幹部の育成事業を手掛ける著者が、プレゼンのノウハウを披露しています。
「説得的プレゼンテーション」というテーマを掲げている一冊。主張が論理的であっても、聞き手の判断基準や優先順位付けが違えば、受け入れてもらえません。
そこでそれらを把握してメッセージを決めるなど、相手にスムーズに理解してもらう「説得的」な行為が重要になると指摘し、全体のノウハウに反映させています。テクニックに頼るのではなく、プレゼンの本質を理解するのに役立ちます。
スティーブ・ジョブズ脅威のプレゼン| 著者:カーマイン・ガロ
聴衆を魅了し続ける世界一の経営者であるスティーブ・ジョブズ。
彼がiPhone、iPad、iPodを成功に導いたプレゼンの極意を解き明かしています。ジョブズが意識していた構成の仕方などの具体例が多く掲載されています。
考える技術・書く技術-問題解決力を伸ばすピラミッド原則| 著者:バーバラ・ミント
マッキンゼーをはじめ、世界の主要コンサルティング会社でライティング指導にあたる著者が、独自のピラミッド原則で問題解決力とコミュニケーション力を伸ばす方法を解説しています。プレゼンの内容がまとまりきれてない人におすすめの本。
「考える技術」「書く技術」「問題解決の技術」の三部構成で、明快な文章を書くということは明快な論理構成をすることに他ならない、という原則に則って書かれている本です。
トッププレゼンターの技術 構成力ープレゼンを成功に導く話の組み立て方| 著者:西原猛
プレゼン初心者の方におすすめの本。
「プレゼン資料はどのような心構えで作成すべきか」「どのような順番で資料を作ればいいのか」「実際に資料作成をするタイミングはいつからか」
など、プレゼンの基礎的なコツ・知識が書かれています。
7.まとめ
プレゼンの目的は、単なる主張や資料説明ではなく、相手にアクションを起こさせることです。
そのためには、構成がとても重要。内容を詰め込みすぎたり、必要以上に長くなりすぎたりするのは、よくありません。
聞き手の気持ちを考えて、ストーリーを構成することが何よりも重要になってきます。
本記事ではそれらの点をふまえ、プレゼンの構成に関する重要ポイントをまとめさせていただきました。今後プレゼンの機会があった際には、ぜひ本記事の内容を参考に構成を作ってみてください。
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