「AIがマーケティングの全てを解決する日がくる」
巷ではそう言われていますし、実際に毎日のAIの進化を感じているとそういう日はくるのだろうと思います。
しかし、AIがいかに進化しようと、モノやサービスを買うのは人間で、私たちマーケッターはAIに負けるその日まで、お客さんのために、そしてエンドユーザーのために、「商品」を届けていく使命があります。
そうなったときに、僕が思い出したのが若かりし日に読んだ名著「影響力の武器」です。
- いかにして見込み客を振り向かせるか?
AIをマーケティングに活用するときに、改めて振り返り、理解を深める必要があると感じました。
なので、最初にこの本を読んでから、今日まとめるまでに10年の月日を経ていますが、あらためて理解を深めると共に、この記事を読んでくれる人と知見を深めていきたいと思います。
目次
影響力の武器とは
まずは、影響力の武器を知らない人、そして久しぶりのため、忘れてしまっている人もいると思うので概要から見ていきましょう。
影響力の武器という名著
影響力の武器という本は、ロバート・B・チャルディーニ氏が提唱する心理学に基づいたアプローチ方法をまとめた書籍で、世界30以上の言語に翻訳されているベストセラー書籍です。
- 人を説得し、こちらが望む行動をとってもらうためにはどうしたらいいのか?
そのための「武器」として6つのパターンがあると提唱した内容です。
マーケティングに携わる人はもちろん、リーダーシップを発揮したい人、インフルエンサーになりたい人、トップセールスマンになりたい人などは、一度は通るであろう書籍です。
影響力の武器を手に入れるとどんなメリットがあるのか
影響力の力は絶大です。人は影響力のある人に影響されて生きているので、モノを売りたいとき、理念や信念を伝えて指示されたいとき、組織をまとめ上げたいときなど、様々な場所でその力を発揮します。
- 起業家
- 経営者やリーダー
- 政治家
- インフルエンサー
これらの人は、ライバルに打ち勝ち、自分を信じる人を導いていかなければなりません。その際に、よりスタッフや仲間とのより強い結びつきを得て、お客さまや支持者に自分自身やサービスを売り込むセールスの力は必須になります。
それが影響力の武器によって手に入るのです。
影響力の武器:6つのパターン
影響力の武器が提唱する6つのパターンは以下の通りです。
- 返報性:reciprocation
- 希少性:scarcity
- 権威:authority
- コミットメントと一貫性:consistency and commitment
- 好意:liking
- 社会的証明:social proof
この6つのパターンを駆使して、ターゲットにアプローチをしていきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
返報性:reciprocation
親切にしてもらったら、親切にしよう。何かおごってもらったら、何か返さないと。そんな風に日常から感じることは多いと思いますが、返報性の法則とはまさにそのことです。
ビジネスにおいても、まさに同じことが言えます。
僕がリクルートでインターンとして働いていた時、担当エリア周りで、とにかく担当者にあって”リクルート”と書かれたメモ帳を置いてくるという仕事がありました。
当時僕は20歳ほどの大学生で、このメモ帳置きまわりにどのくらい意味があるのだろうと思っていましたが、今となればわかります。このプレゼントをするという行為によって、
- 担当に接触することができる
- プレゼントをしたという事実を作ることが出来る
- メモ帳が電話の横に置かれれば、嫌でもリクルートのロゴが目に入る
という3つの効果を与えることが出来ていたのです。ダイレクトに返報性の法則と言えるのはプレゼントをした事実ですが「採用で困ったらとりあえずリクルートに聞いてみるか」となった人が多数いることは否めません。
ちなみに、リクルートではその後も、ペンを置きに行ったり、クリアファイルを置きに行ったり、プレゼント攻撃を続けていました。
リクルートはこの返報性を使うのが上手いから、いつまでも業界トップを走っているのだと思います。
希少性:scarcity
人は自分が欲しいと思うものが「買えなくなるかもしれない」と思うと、とたんにものすごく欲しいものに変わります。
例えば近年で言えば高級時計やウイスキーなどがあるでしょう。
- 定価120万円のロレックスが中古マーケットで360万円で売っている
- 定価10万円のウイスキーが中古マーケットで35万円になっている
バブルと言えるかもしれませんが、供給に対して需要が大幅に多くなった時に、定価よりも高くても買いたいという人が現れるほど、希少性には効果があります。
実際のマーケティングの現場においても
- 「数量限定」「期間限定」「あと3点」:個数の限定感
- 「日本限定版」「完全生産限定版」:エリアによる限定感
- 「今すぐ予約すると特別特典がつく」:特典の限定感
など希少性をあえて打ち出して、お客さんの欲しい欲求を高めようとします。
希少性の法則は、商品やサービス特別感を付与し、独占欲を刺激することによって、実際の行動を喚起します。少し大げさかなと思っても、相手には普通に伝わっていることが多いのが希少性です。
人は権威に弱いもの。書籍でもハーバード大が教える○○、スタンフォード流○○というのが人気なように、ついつい権威に心が動かされます。
お客さんのプロモーションをするときには必ず権威をつけてくださいとお願いしていました。
- 医師や弁護士が監修
- 芸能人やスポーツ選手が使用
- その業界で特別な賞を受賞している
- 雑誌やテレビで取り上げられた
などです。僕はこれを「お土産」と呼んでいましたが、お客さんに対する権威というお土産です。
商品は買うまで良いかどうかわかりません。なので、権威というお土産をつけてあげることで保険のような役割を果たすのです。
コミットメントと一貫性:consistency and commitment
コミットメントとは、その人自身が公に公表した目標として、一貫性とはその表明した目標に向かって少しでも行動すると、その行動と同じ方向性に動き続けないと違和感を感じるというものです。
具体的な例を挙げると、例えば自己啓発の商材があるとします。
入会する前に、無料動画やPDFをプレゼントして、興味喚起を促します。
その後、お客さん自身に「成功したいですか?」と尋ね「はい」という答えをもらいます。
そしたら「では、成功するための第一歩として、この(プレゼントした)動画を見た感想をコメント欄に書いてください」と伝えます。
コメントくらいならやってみようと思った人はこのコメントをするという簡単な行動をします。
すると次からはコメントは当然するものとして、続きの動画を見ようとするかもしれないし、その後にある有料セミナーに申し込むかもしれません。
なぜならば、成功したいと自分でコミットして始めた行動は、今度は止めることの方が違和感があるからです。それが「一貫性」ということです。
好意:liking
自分に興味を持ってくれている人、自分のことを気にかけてくれる人、自分のことを好きでいてくれる人に、イエスと答えたいという気持ちは日常もビジネスも同じです。
例えば権威の時に出てきた芸能人の例であれば、自分が好きな芸能人がおすすめした商品は何も考えずに買ってしまうのも一つの好意。
ただし、一般的には好意を持ってもらうには
- 自分に似ている
- 褒めてくれる
- 同じゴールを目指す仲間である
この3つを意識すると良いとチャルディーニ氏は述べています。
信頼関係を気づくために共感や共有をするというのは、近年SNSを中心に、企業とユーザーをつないでくれるものであるとも言えます。
下心のない親切心は、人の心を開くパワーを持っています。
社会的証明とは、多くの人がある行動をとっている場合、自分自身も同じことをする傾向があるというものです。これは「群れの心理」とも関連しており、他の人の行動を参考にして、自分も安全な行動をとるための手がかりとす原始時代に生き延びる術を反映しているとも言えます。
日本人は特に社会的証明に弱いと思われており、例えば行列の出来るラーメン店にさらに長蛇の列ができるといったものです。
マーケティングにおいては
- 売れている感を演出すること
をとても重視します。例えば
- 販売数20万個突破
- アクセス数1000万人突破
といった表記は何度も見ていると思いますし、それができないとしても、webサイトの改良や動きをつけて動いている感じを演出します。SNSなどのコメント欄で活気のある演出をすることもあります。
口コミやレビューにコメントを書き込むと特典がもらえるという仕組みもありますよね。口コミはそのまま社会的証明になるので、商品をローンチしたばかりの時は特に重要なのです。
また、これにはやった人だけしかわからない不思議があって、人気のある感じというのは、たとえ他の人が直接見ていなかったとしても、なぜか伝わるものです。
- 人気があるから、さらに人気になる(とくにそれ以上の理由はわからない)
というのはマーケティングあるあるです。
影響力の武器はすべて使う
これまで紹介してきた影響力の武器は単体で使ってももちろん効果はありますが、合わせ技をすることによってその効果をさらに高いものにします。
ラーメンで言えば、全部乗せというくらいの勢いです。
これを僕はマーケティングにおける要素と呼んでいますが、新しいことを考えようとするのではなく、この影響力の武器が与えるパターンに、商品をのせていくというのが売れるパターンだと考えています。
もちろんこれはイノベーターの考え方ではありません。
しかし、モノを売るという現実を考えるとこの要素乗せというのが、恐ろしいほどの効果を発揮します。
細かく言うと、この6パターンだけでなく
- 緊急性を出す
- AorBの形で迫る
- 実際に商品やサービスに触れさせる
- 思い切った保証をする
- 明確な指示を出す
- 自分で権威を作り出す【(自分で作った)○○防止委員会代表など】
などテクニックはいくつもあります。
ただし、影響力の武器が示す6つのパターンの派生と考えることも出来るので、この6つのパターンは暗記してしまうくらいでよいと思います。
AI時代に影響力の武器をどのように活用するのか?
AIにマーケティングがとって変わるようになれば、当然AIもこの影響力の武器を活用した提案をしてくると思います。
テキスト生成もかなり精度は上がってきていますし、そこに影響力の武器を活用してくるもの時間の問題のような気がします。(2023年5月16日現在)
ただし、完璧にやるようになるにはもう少し時間が必要です。そこで私たちが出来ることは、
- AIにこの6つのパターンを意識させてプロンプトで指示出しをすること
- AIが出したアウトプットに対して監修できる知識を持つこと
- 適切なタイミングで6つのパターンが使われているか確認すること
この辺りになるかと思います。先3年なのか5年なのか、どのくらい進歩するのか誰も読めていないと思いますし、AIだらけになった時に、AI同士がどう表現しあうのかも、もう少し現実が追い付かないと完璧には見えてきません。
しかし、私たちが毎日のビジネスを行う中で、AIに完敗するまでは、その業界の中で戦っていかないといけないのも事実ですし、稼いでいかないといけないのも事実です。
ということはAIがやってくれる前に、AIのマネージャーとなり、リーダーシップをとっていかなければいけないということです。
この記事を読んでくれた人、一緒に仕事をしている人とは、一緒にAIと仲良くしながらビジネスを加速させる方法を見つけていきたいと思っています。
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