どうにも仕事にやる気が出ない、このままじゃいけない…と危機感をお持ちなら、即効性のテクニックで当面のやる気を引き出しつつ、内面と向き合い長期的なモチベーションを保っていくことが有効です。

また部下を持つあなたには、部下にやる気を出させる叱り方と褒め方のコンビネーションや、心療内科・精神科を受診する際の目安も解説します。

仕事にやる気がないのは、多くの場合本人の怠慢だけが原因ではありません。

短期スパンと長期スパンを組み合わせた適切な対応をすることで、効率的にやる気をもって仕事をこなせるようになるはずです。

目次




1.即効性|今すぐやる気を引き出す2つのテクニック

いまいちテンションが上がらないけど、期日が近い作業が…そんなとき、やる気を急上昇させるテクニックを紹介します。

テクニックその1|身体に刺激を与えやる気を出す

体への刺激1:とりあえず手を動かし側坐核を刺激

画像1 脳のほぼ中央付近に「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる部分があります。この部分が働き、脳内物質が分泌されることでやる気が出ます。

側坐核を刺激するためには、とにかく実際に行動すること。デスクワークなら手を動かすことで、この部分が刺激され自然とやる気が出てきます。逆に言えば、行動せずにやる気をみなぎらせるのは難しいのです。

側坐核を効率的に動かすためには、簡単な仕事から手を付けることが有効です。5分で終わる作業でかまいませんので、実際に手を動かすことからその日の仕事を始めましょう。

画像参照:勉強のプロセス

体への刺激2:あえて翌日に作業を残す

完了間近の仕事をあえて次の日に引き継ぐことで、翌日の仕事のスタートをスムーズにする効果があります。

もちろん上で解説した側坐核を刺激するためにも有効なので、期日に余裕がある業務を、あえてやりかけのまま残してみましょう。 仕事を完了させるという、一番美味しい部分をいきなり体験することで、脳が達成感による刺激を受け活発になることが、脳科学的にも説明されています。

体への刺激3:プチ仮眠で心身をリフレッシュ

10~15分程度の短い睡眠をとることで、頭がリフレッシュされてやる気も戻ります。こういった短い時間の睡眠で身体の疲れは取れませんが、意識をスッキリさせる効果がやる気を出すために有効です。

しかし職場によってはあなたの評価を下げたり、トラブルになるため、実行には注意する必要があります。

体への刺激4:椅子に深く座り、背筋を伸ばす

長時間椅子に座っていると、次第に姿勢が崩れていくもの。1度深く座り直し、背筋をピンと伸ばすことで心身が引き締まります。 また悪い姿勢でいることで、筋肉が過度に緊張して血流が悪くなり、肩こりの原因になることがあります。

体への刺激5:ストレッチをして肩甲骨付近の筋肉を動かす

肩や首がこっていると全身がだるくなり、やる気があっても仕事に集中できなくなってしまいます。

肩や首のこりには様々な要因がありますが、肩甲骨付近の筋肉が凝り固まり、血流が悪くなるパターンが多いです。肩甲骨は、腕を自由に稼働させるために可動範囲が広く、筋肉の海の中に浮かんでいるような状態です。

そのため意識的に動かしてあげないと、周囲の筋肉の血流が悪くなってしまいがちです。 ストレッチにはいろいろな方法がありますが、椅子に座ったままでもできるものを紹介します。

画像参照:Yahoo!知恵袋

【その1】肩ストン
  1. 両肩に力を入れて持ち上げ、首と肩の先がくっつくように緊張させた状態を5秒ほど保つ
  2. 力を抜いて肩をストンと落とす
【その2】タオルを活用

1.息を吸いながら両手でタオルを持ち高く掲げる

2.息を吐きながら肘を下げてタオルを肩のラインまで下げる

文典:ALL About Beauty

テクニックその2|心を調えやる気をチャージする

やる気チャージ1:作業を棚卸しして現状を視覚化する

自分が今なにをしなければいけないか把握できていないと、そのこと自体がストレスになり、仕事への意欲を削ぐ原因になります。

こういった状況に陥らないよう、今抱えている作業内容を整理し、見えるように並べることから始めてみましょう。 こういったいわゆる棚卸しの作業をすることで、やらなければいけないことが視覚的に整理できます。

それにより、複数積み重なっている作業を各個撃破していくストーリーが自然と見えてくるはずです。

また整理整頓そのものに、精神的なリフレッシュの効果があります。

やる気チャージ2:作業の制限時間を決める

一部の勤勉な人は別ですが、大半の普通の人は作業の締切が近づかないとエンジンがかからないもの。

学生時代、夏休みが終わる間近になってから超人的な集中力を発揮し、どうにか終わらせた経験がある方も多いでしょう。 期限が迫っていたほうがやる気が出るなら、人工的にその状態を作ってしまいましょう。

  • 「絶対に17時までにこの作業を終わらせる!」
  • 「今週中に必ず企画書を仕上げる!」

というようにタイトな締切を自分ルールとして設定し、少なくともその期限までは一生懸命作業することで、自然と意欲はアップするはずです。 時間があるときほど、時間の使い方を意識しましょう。

2.根本から改善|やる気が出ない原因を対策する

2-1.やる気が出ないのは行動へのためらいがあるから

ここまでは今すぐにやる気を取り戻す方法について解説してきましたが、ここからは長期的にやる気を維持するための根本的な対策を解説していきます。

さて、「仕事にやる気が出ない」という状態は「やらなければいけないことはわかっているのに、それをやることへのためらいがある」状態です。

言い替えれば、「行動するという決断を避けている」状態です。 さしあたってやらなければいけない仕事がないなら、やる気がなくてもたいした問題ではありませんよね。やる気がないことが問題になるのは、今目の前にやらなければいけない作業がある場合です。

やらなければいけないのに、行動がともなわない…これがやる気が出ない状態ではないでしょうか。

2-2.行動を決断させるための心のあり方

心のあり方1:得られる未来をできるだけリアルに想像する

仕事をしていると、どうしても目先の作業の解決に追われがちですが、だからこそ3年後、5年後、10年後をイメージすることが大切です。

今やらなければいけない仕事は、なんらかの形ですべて未来につながっていきます。このことを強く意識し、自分が所有している畑を耕しているイメージで眼前の仕事に向かうことで、自然と行動へのためらいは薄らぐでしょう。

心のあり方2:人に伝え共有する

今自分がしなければいけないことや、将来的に実現したいことなどを人と共有してみましょう。言語化することで、頭の中に漫然とあるイメージの状態から、立体的な目標へと変化します。

短期的な作業の内容や長期的な展望が具体化することで、行動する決断の助けになります。また人に伝えることで責任感が生まれ、より作業へのモチベーションが上がります。

心のあり方3:自分なりの意味を付け加える

やる気が出ない=行動を決断できない理由として、その行動と結果によりもたらされる結果に、魅力を感じていない、納得していないというケースも考えられます。

がんばっても報われないなら、たしかにやる気が出ないのも当たり前です。

こういった場合には、その仕事に対して自分だけの意味づけを行うことが有効となる場合があります。大変な労働でも「家族を養うため」という目標があればやる気は出るものですし、「自分だけは自分を裏切らない」という意志を持つことで初志貫徹できるかもしれません。

3.やる気が出ない部下へは「叱り」と「褒め」を併用する

自分自身にやる気があっても、部下にやる気がないケースも考えられます。そういった部下に対しては、叱ることと褒めることを上手に組み合わせることで正しく教育でき、ひいては部下のやる気を維持することにつながります。

3-1.正しい部下の叱り方

部下の行動に問題があったときに正しく叱れないと、部下の成長につながらず、また職場の雰囲気も悪くなります。

部下を叱る際には、基本的に以下のシチュエーションに限定することで、叱るという行動に統一感を持つことができます。

叱り方1:チームのルールを守れなかったとき

組織内にある規則や基準から逸脱したときは、規律を守るためにもしっかり叱る必要があります。

ここを曖昧にすることで、以後ルールが守られなくなり、組織内の規律がどんどん緩んでいく恐れがあります。

叱り方2:業務上のミスがあった場合

上司側がきちんと仕事の進行や必要な情報を共有できており、本人の取り組み方に問題があるなら、しっかりと叱る必要があります。

ただし上司側の指導にも問題があるなら、上司と部下の間で仕事の進め方を再確認しなければいけません。

3-2.正しい部下の褒め方

適切に部下を褒めることで、仕事へのやる気を引き出すとともに、部下の成長へもつながります。この際気をつけてほしいのは、褒める基準はあくまで部下にあり、上司の基準で褒めてはいけません。悪い例でいえば、「上司の言う通りに行動したこと」を褒めてしまうと、部下は上司の顔色ばかりうかがうようになってしまう可能性があります。

褒め方1:取り組み方を褒める

仕事の途中経過を褒めることで、部下は安心してその仕事に取り組むことができ、仕事への意欲を維持できます。

褒め方2:結果を褒める

完了した仕事の結果について、公平に評価を下しましょう。成果を具体的に評価してもらうことで、部下の仕事の納得感につながります。

4.やる気が出ないのはもしかして病気かも?

仕事にやる気が出ないからといって、単純に本人の怠慢と片付けるわけにはいきません。2.【根治】やる気が出ない原因を対策するでは、行動へのためらいがやる気が出ない原因であることを解説しましたが、無気力にはなんらかの原因があるものです。

心の病気の可能性をチェックポイント

やる気が出ない原因が、精神的な病気である可能性も考えられます。以下のような状態が2週間以上続くようなら、専門機関で診断を受けてください。

  • 朝スマホや新聞を読む気にならない
  • 朝テレビが映っているとうるさく感じる
  • 遅刻や午前休が増えてしまった
  • 仕事に集中できない
  • 仕事でちょっとした判断ができない
  • つまらないミスが増え、そのことで注意されたことをクヨクヨ引きずる
  • 交渉で強く押せない
  • 発言に自信がない
  • 人付き合いが面倒
  • 休日はひたすら寝て過ごしたい
  • 休日明けの出社が精神的に辛い
  • 寝付けないのに目覚めが早い
  • 身だしなみに関心がなくなってきた
  • 食欲がない
  • イライラしていて怒りっぽい
  • 涙もろくなった
  • 会話がおっくうで口数が減った
  • メールやLINEの返信が面倒
  • 朝の化粧が面倒(女性の場合)

病院はどこの科を受診する?

メンタルの病気を疑うなら、心療内科か精神科のどちらかになりますが、両者には以下のような違いがあります。

心療内科

心身症の専門機関です。心身症とは、心を原因として身体に悪影響が出ている状態であり、具体的に身体に変調がある場合は心療内科が最適です。

精神科

精神疾患を扱います。精神疾患とは、心の病気であり、鬱、幻聴、幻覚などが該当します。身体に変調がない精神的な病気の疑いがある場合はこちらです。

5.オススメの本

仕事へのやる気は、幅広い層のビジネスパーソンにとって重要なテーマなので、言及している書籍もたくさんあります。そのなかでも、特にオススメのものを紹介します。

『本気で変わりたい人の 行動イノベーション — 本当の欲望に素直になれば、やる気が目覚める』 著者:大平信孝

このままではいけないとわかっているけど、どうしていいかわからない…といった悩みを持つ人への最終兵器といった位置づけの本です。自分の気持ちに正直になることをベースに、自分を変える力を引き出します。

『稲盛和夫の経営問答 従業員をやる気にさせる7つのカギ』 著者:稲盛和夫

京セラやKDDIを創業し、JAL再建の主力を担った稲盛和夫氏への問答集。経営者は、いかに従業員のやる気を引き出すかが最重要であり、そのための気構えや技術が解説されています。

『ダメな自分を救う本―人生を劇的に変えるアファメーション・テクニック』 著者:石井 裕之

潜在意識を心強い味方へと変える、アファメーションの考え方を学べるオススメの一冊です。人生を思い通り進めるためには、意識と潜在意識のスムーズな連動が必須です。

6.まとめ

仕事へのやる気を回復させ、長期的に維持するためのアプローチをここまで解説してきました。

こういう時に焦って「やらないと!」となってしまうと、その焦りから身体や精神を崩してしまい、回復までに余計時間がかかってしまうことがあります。

まずは目の前のちょっとしたことだけスタートして、やる気になるまで待ちましょう。メールを1本だけ書く、でも良いと思います。

また、一旦落ち着くことで、自分を客観的に見つめることができ、『今は良い波がきていないからじたばたしても仕方ないな』と考えることが出来るかもしれません。

やる気がない時というのは、ある意味でチャンスであるともいえます。

なぜなら、その目の前にやっていることが自分は好きでない、ということに気づけるかもしれないからです。

好きなことをし続けなければ、一時しのぎとしてなんとかなっても、結局はまたやる気にならないと悩むことになってしまいます。

好きなことをやるから上達する。そんな風に考えられたらもっと良いですね。

仕事が楽しいと言って働ける日がくることを望んでいます。