世の中には「天才なのか!?」と思えるほど、プレゼン上手な人がいます。

故スティーブ・ジョブズもその一人でしょう。

結果として、iPhoneをはじめとするApple製品がバカ売れしていることはご存知の通り。

オリンピックにしても、見事、開催地に決定しました。

何か大きな偉業を成し遂げるには、プレゼンの成功が不可欠。

iPhoneやオリンピックほどではなくとも、他人に何かを伝えて共感してもらうには、プレゼンが欠かせません。

とはいえ、世の中の多くの人は天才ではなく、努力の結果として何かを勝ち得ています。

プレゼンもそう。準備も対策もなしに、聴衆から拍手喝采のプレゼンを行なうことは難しいでしょう。

プレゼンを成功させるには、いくつかのコツがあります。

ここで紹介する方法を実践し、「素晴らしかった」「とても良かったよ」と言われるプレゼンでぜひ成功を掴んでください。

目次




1.今すぐ実践できる、プレゼンのコツ5つ

本稿をご覧の方の中には、

「プレゼンを数日後に控えて困っている」

「プレゼンがうまくなる手っ取り早い方法はないものか…」

と切羽詰まっている方もいらっしゃるかと思います。

そこでまずは、小手先だけれど即効性のある「テクニック」論からご紹介していきます。

本当の意味でのプレゼン上手には、言わずもがな一朝一夕でなれるものではありません。

ただし、ちょっとしたテクニックを知っているのと知らないのとでは、前者のほうがプレゼンを成功させる確率が高いことも言うまでもありません。

あなたが行なおうとしているプレゼンを今一度見直す意味でも、ぜひチェックしてみてください。

プレゼンのコツ1:「つかみ」をマスターする

プレゼン当日、あなたの発表が始まったら、まず最初に成功したいのが『つかみ』の部分です。

プレゼンの最初で聞き手の意識を自分に向けさせ、かつポジティブに話を聞いてもらえる環境をつくりだしましょう。

  • プレゼン当日、最初に成功したいのは『つかみ』の部分。
  • 『つかみ』は聴衆の注意を引きつけ、ポジティブに話を聞いてもらえる環境をつくりだすこと。
  • お笑い芸人やマジシャンのような大きな反応は期待しなくてもよい。
  • 特別な話術やテクニックがなくても『つかみ』を成功させる方法を学ぶことができる。

1.質問を投げかける

「さっそくですが、皆様にお聞きしたいことがあります。皆様の中で、いつも小切手帳の収支を合わせるようにしている、という方はどのくらいいらっしゃいますか」

⇒聴衆のほとんどが挙手

「それでは次に、そうするのが『好きだ』という方はどのくらいいらっしゃいますか」

⇒全員が手をおろす
(米国大手ソフトウェア会社創業者、スコット・クック氏)

これは同社が新たに開発した会計ソフトのプレゼン。

難しい技術の解説から始めるのではなく、まずは聴衆に寄り添い、うまく関心を向けさせています。

「収支合わせは必要なことだが、面倒な作業である」

という一般認識を浮き彫りにした上で、簡単で使いやすい自社ソフトをアピールする、という流れです。

2.秘密を打ち明ける

「最初に告白させてください。20年ほど前にしたあることを私は後悔しています」
(作家・ビジネスジャーナリスト、ダニエル・ピンク氏)

冒頭でこんなことを言われれば、思わず聞き入ってしまいますよね。

人間の好奇心をうまく煽った巧みなつかみです。

3.インパクトのある演出で驚かせる

「ご存じのとおり、マラリアは蚊が媒介します。みなさんにも体験していただこうと思って、今日は何匹か連れてきました。ちょっとばかり自由にしてやりましょう。貧しい人しかこんな体験ができないというのも、おかしな話ですから」

(マイクロソフト共同創業者、ビル・ゲイツ氏)

アフリカのマラリア問題についてのプレゼンで、ゲイツ氏は蚊の入ったガラス瓶を壇上で掲げました。

聴衆は驚くとともに、大爆笑をしながら拍手喝采。

もちろん中の蚊を本当に放すわけではありませんが、こういった予想外のことをされると強く記憶に残るものです。

4.エピソードから入る

「二週間前、パリにある自分のスタジオにいると、電話が鳴って『ちょっとJR、TED Prize 2011受賞だって。世界を救おうって願いを伝えるのよ』」
(ストリートアーティスト、JR氏)

自分が実際に体験したエピソードから語り始めるというテクニック。

セリフもあって程よくコミカルで、聴衆がイメージしやすい内容になっています。

「この後どう展開していくのかな?」と自然と引き込まれるプレゼンです。

プレゼンのコツ2:ノイズを減らす

話をする際に「あー」「えー」といった言葉をよく使ってしまう人や、「つまり」「要するに」「というか」といったフレーズを繰り返してしまう人がいます。

これらは、聞き手にとってはノイズとなってしまい、神経質な相手であればプレゼンの内容が理解できなくなってしまいます。また、ノイズを発するたびに相手にイライラを与え、プレゼンの成果が損なわれる可能性もあります。

プレゼンの準備を入念にしても、相手に悪い感情を残してしまうと意味がありません。

ノイズを除去することを意識しましょう。

プレゼンのコツ3:適度な間を取り入れる

聞き手はプレゼンの最中に、3つのことを行なっています。

同時に復数のことを行えば、それだけ意識が拡散するのは必至。

それぞれの行為に集中できる工夫が必要です。

聞き手が行なう3つの行為は以下の通り

  • スライドのテキストを読む
  • 写真やイラスト、グラフを見る
  • プレゼンターの発する言葉を聞く

それぞれが並行して行なわれるので、完全にひとつのことに集中してもらうのは難しいかもしれません。

しかし工夫一つで、極力、各行為に集中してもらうことができます。

その工夫とは、プレゼン中に適度な間をとること。多くの聞き手は、プレゼン資料が変わるたびに、画面に意識が移ります。

投射されている内容のもっともインパクトがある部分に目線が行き、意識も移ることでしょう。印象的な図や写真があればなおのこと。

  1. ページを更新する
  2. このページで伝えたいことを端的に言う
  3. 聞き手がざっと資料を眺める時間をとる
  4. 印象的な写真があれば、「写真をご覧ください」と一言付け加えて間を空ける
  5. 「それでは◯◯について説明いたします」と意識を自分の発言に向けさせる

このように、適度な間を取りながらプレゼンテーションを行なう工夫が必要です。

プレゼンのコツ4:資料を音読しない

プレゼンでやってしまいがちなのが、資料をそのまま読み上げることです。

たとえ素晴らしい資料を作ったとしても、読み上げるだけのプレゼンは意味がありません。資料を読み上げるだけであれば、メールに添付して送信するだけで済んでしまいます。

聞き手を集めてプレゼンを行うことの最大の効果は、あなたの言葉で想いを伝えることがです。

聞き手は、資料を読み上げられるだけのプレゼンには興味を持ちません。その場合、「それ、書いてあるよ」と思われてしまい、聞き手は退屈してしまいます。

聞き手は、資料を見ながらページをめくり、あなたのペースを無視してしまうでしょう。資料を見終えたら、退屈そうに座っているか退席するだけになってしまいます。プレゼンの効果を発揮するには、あなた自身が想いを込めた言葉でプレゼンを行うことが大切です。

この残念な事態をさけるためには、実は事前準備である資料作成が重要です。

  • テキストをだらだらと書き込まない
  • 要点のみを箇条書きにして、説明を聞きたい内容にする
  • 写真や図を盛り込んで、読み解きたくなる仕掛けをつくる
  • 資料には入れていない情報を口頭で補う
  • 資料の内容そのままではなく、口頭用に言い換えるなどのアレンジをする

これらの工夫することで、資料だけを読み進められてしまう失敗は防げるでしょう。

資料作成のコツについては後の章でご紹介しますので、そちらもチェックしてみてください。

プレゼンのコツ5:ベネフィットは情熱的に語る

どうすれば聞き手が退屈せずにプレゼンを聞いてくれるか。

それは、プレゼンテーションで自慢話をすることを避けることです。

聞き手は、あなたや商品、会社の自慢を聞くためにプレゼンを聞いているわけではありません。プレゼンされる対象が、自分たちにどのようなベネフィットがあるのかを知りたいだけです。

もしそれがわからなければ、聞き手は興味を持たず、感情がマイナスになってしまいます。

プレゼンテーションで成功するためには、聞き手にとってのメリットやベネフィットを明確に伝えることが必要です。

ここで注意すべきは、メリットとベネフィットの違いです。

メリットは、自分や商品、企画の利点を伝えることであり、プレゼンの場でもよく用いられます。しかし、プレゼンを成功させるためには、メリットから派生するベネフィットを提示することも重要です。

ベネフィットとは、プレゼン内容を取り入れることで得られる結果や未来のことを指します。

例えば、新企画をプレゼンする際には、提案相手のメリットとして従業員の満足度が上昇することが挙げられます。

この時点で興味を持ってもらえるかもしれませんが、更に踏み込んで、新企画を取り入れることで、従業員の満足度が高まり、その結果会社として売上が増加する可能性があることを伝えると、聞き手は興味を持ち、プレゼンを聞き続けることができます。

プレゼンの場では、メリットだけでなく、ベネフィットの提示が重要です。

特にベネフィットは未来を見せることができるため、熱量を込めて語ることが大切です。熱量を込めるためには、身振り手振りや声の強弱、絶妙な間を取る、視線を有効的に使うなどのテクニックも効果的です。これらのテクニックはすぐに身につくものではありませんが、

まずはベネフィットを見つけることが大切です。そのためには、プレゼンする対象物についてよく理解しておく必要があります。

その対象物が人であれば、その人のニーズや課題を理解し、それを解決することで得られる成果や未来を明確にすることが重要です。もし商品やサービスであれば、それがどのような問題を解決するために存在しているのか、その結果としてどのようなメリットやベネフィットが得られるのかを考える必要があります。

ベネフィットを見つけたら、それをプレゼンの中心に据えることが大切です。プレゼンの冒頭で聞き手にそのベネフィットを明確にし、それを得るために自分たちが提供できるものを示すことで、聞き手の興味を引き付けることができます。

また、プレゼンの中盤では、そのベネフィットをより具体的に説明し、それを実現するための方法や具体的な成果を示すことが重要です。最後には、プレゼンの結論として、そのベネフィットを再度強調し、聞き手にアクションを促すことが必要です。

そして、プレゼンを成功させるためには、熱量を込めて語ることが重要です。

自分自身がそのベネフィットを信じ、その結果を実現するために全力で取り組むことをアピールすることで、聞き手に強い印象を与えることができます。また、身振り手振りや声の強弱、間の取り方、視線の使い方など、細かなテクニックも効果的です。

これらは練習すれば身につくものですので、何度も練習を重ね、自分自身が自信を持ってプレゼンできるようになりましょう。

2.今すぐ実践できる、プレゼン資料作成のコツ5つ


プレゼンに欠かせないものと言えば、プレゼン資料です。

口頭でのプレゼンのベースとなり、重要事項を視覚情報で伝えることができる心強いツールになります。

「資料作成なんて面倒だし苦手だな…」という方もいらっしゃると思います。

しかし資料作成の過程は、プレゼンの構成をブラッシュアップするのにも多くの役立つ行為になります。

プレゼンの構成を考えるための基本的なポイントは、別記事『プレゼンを上手く行なうための「構成」のコツ』でご覧いただけますが、ここでは資料作成におけるコツをご紹介したいと思います。

プレゼン資料作成のコツ1|テーマを明確化する

プレゼン資料の肝となるのは、全体像・枠組みを固めること。いわゆる「テーマ設定」を行ないます。

テーマが定まっていないと、プレゼン内容自体があちらこちらへ拡散し、聞き手の理解を妨げることになります。

場合によっては聞き手が途中で離席してしまうことも。

どれだけ素晴らしい提案だとしても、テーマが定まっていない=優れた提案だと思われない、という結果につながってしまうこともあります。

話があらぬ方向にジャンプを繰り返し、聞き手にそっぽを向かれないためにも、以下の6つを意識してテーマ設定を行ないましょう。

  1. プレゼンの目的・ゴールを明確にする
  2. プレゼンする相手が誰なのかを明確にする
  3. プレゼンする内容の対象範囲を明確にする
  4. 提案するあなた自身の立場を明確にする
  5. 一番伝えたいことが何かを明確にする
  6. テーマ名、資料のタイトルを明確にする

これらを明確化することで、論点や主張がブレない資料を作成することができます。

プレゼン資料作成のコツ2|目次をざっくり作る

テーマが明確になったら、次は目次を作成しましょう。

最初は、あなたが資料作成のガイドとして利用できれば合格。完璧につくり込むのは、もっと後の段階です。

ラフスケッチの感覚で、章立てを考えていきましょう。

例えばプレゼンの目的が「企業にMacを導入してもらうこと」であれば、次のような目次を考えます。

  • Macを導入することで得られる利益
  • その利益が得られる根拠
  • Macでなければダメな理由
  • OSや機種ごとの性能の違い
  • 導入までの手順

このように、大まかな章立てを行なうことがスタートです。

作文の授業で習ったことがあるかもしれませんが、起承転結を意識するのも良いでしょう。

また上手なプレゼン、およびプレゼン資料では、いわゆるサビ、クライマックスを最初に持ってきて、その後にデータや分析結果を引用して根拠付けする傾向があります。

章立てのポイントとして、主題となることを冒頭で伝え、根拠付けしていき、最後に改めてテーマに落とすという流れを意識してみると良いでしょう。

プレゼン資料作成のコツ3|内容が一目瞭然の見出しを作る

ここまでで、プレゼン資料のテーマと大まかな目次が決定しました。

資料の大まかな枠組みが決まったということ。ここからいよいよ、資料の中身を作っていきます。

各ページに慎重に選んだ情報を加えていく工程の始まりです。

最初に行なうのは、先ほどざっくり作った目次をブラッシュアップして、見出しを作成することです。

各スライドの一番上に置く、ページの内容が最も伝わる、キーフレーズともなる文章を作成します。

資料において、最大のポイントと言っても過言ではありません。

意識したいのは、見出しを見ただけで何を伝えるページなのかが分かること。

これから話す内容が一目瞭然で、興味を持って聞きたくなるフレーズが必要です。

ただし興味を引くことに意識を集中しすぎると、慣れないうちは時間がかかりますし、作成者だけが満足して、聞き手や読み手には理解できなくなる危険性もあります。

まずは、「ページの内容が一目瞭然の見出し」であることを合格ラインとしましょう。

イメージしていただきたいのは、新聞の見出しやヤフートピックスのタイトル。

ヤフートピックスのタイトルは、13文字で作成することが決まっています。

たった13文字ですが、どんな情報が掲載されているかがよく分かる好例です。

余談ですが、13文字に決まった理由は、空間的制約もさることながら、最低限の情報を伝えながらも、人が理解できる最適な分量であること。

文章を読んで理解してもらうのではなく、見せることを意識したそうです。

プレゼン資料とインターネットニュースの違いがありますので、無理に13文字で作成する必要はありません。

重要なのは「じっくり読み込まなくても、ページに書いてある内容を理解できる」こと。

プレゼン資料の見出し作りに意識を集中してください。

プレゼン資料作成のコツ4|情報を詰め込み過ぎない

見出しが決まったら、情報の内容を入れていきます。

ここで注意したいのが、情報を詰め込み過ぎないこと。伝えたいことが多いとあれもこれもとたくさんの情報を入れたくなりますが、情報過多は理解の妨げになります。

また、プロジェクターで投影する場合などは文字サイズが小さく読みにくくなってしまい、それでは意味がありません。

情報量に注意をする際に意識していただきたいのは、自分がつくり易い資料ではなく、相手が理解し易い資料をつくること。

これを意識すると、具体的に以下のように、情報の出し方を検討することが可能です。

  • テキストばかりではなく、画像で見せる方が理解し易いのではないか
  • 文字で作成したデータをグラフ化することで理解し易くならないか
  • データを並べただけでなく、そこから読み取れる解釈を入れているか
  • 比較対象を増やしすぎて混乱しないよう、主要な比較対象のみに絞れないか
  • 文字の大きさは読みやすいか、重要なキーワードは強調されているか
  • 黒いテキストばかりで退屈な資料になっていないか
  • たくさんの色を使いすぎて、要点が分からなくなっていないか

これらを意識して、情報過多の資料とならないように気をつけましょう。

プレゼン資料作成のコツ5|推敲をかさねて質を高める

いよいよ、資料作成の最終工程です。各ページ、そして資料全体の整合性を取り、推敲をかさねることで、プレゼン資料を完成させましょう。

ページごとの推敲で意識したいのは、以下のポイント。

  • 目次と各ページの見出しが同じになっているか
  • 見出しはページ内容を理解できる内容になっているか
  • 見出しを補足、根拠となる情報が入っているか
  • 話がつながっているか
  • 誤字や脱字がないか
  • 適度にグラフや図を用いて、退屈しない見た目になっているか

資料全体においては、以下の内容を確認しましょう。

  • テーマがきちんと伝わるか
  • 起承転結を意識して作成されているか
  • ページの順番は適切か
  • 前後のページと重複する内容を入れていないか
  • 話の流れは辻褄があっているか

これらを何度も見直して、伝わる資料作成を行ないましょう。

最後の見直しでは、是非、客観的な目で見ることを意識してください。

資料を作成した自分自身では理解できても、初めて見る・聞く人には伝わらない場合が多々あります。

相手を気遣い、理解しやすい、印象に残る、感情が動かされる資料になっているか、充分に確認しましょう。

プレゼン当日までに確認すべきこと

以上が資料作成のコツですが、せっかくの準備が台無しにならないよう、プレゼン当日までに確認しておくべきことがあります。

多くの場合は、パソコンで作成した資料をプロジェクターで投影するなどし、あなたが解説を行なうことになるでしょう。

事前に資料を印刷して、聞き手に配るケースも。資料作成を行なう際に、まずは以下のことを確認しておきましょう。

  • プロジェクターに投影することが可能か
  • プロジェクターとパソコンを接続できるか
  • プレゼン資料を印刷して配るか
  • 聞き手の人数は何人で資料を何部印刷するか

特に気をつけたいのが、プロジェクターとパソコンの接続。

例えばあなたのパソコンがMacだった場合、プレゼン会場のプロジェクターが対応していないことも。

まったく接続できないわけではなく、専用の接続ケーブルが必要となる場合があります。

また聞き手の人数を確認しておくこともマスト。急な参加者にも対応できるよう、何部か多めに資料を印刷しておくと安心できますね。

3.プレゼン成功のために覚えておくべきこと

前章までは、プレゼンを成功させるためのテクニック論についてお伝えしてきました。

ではそもそも、プレゼンの成功とはどんな状態を指すのでしょうか。

プレゼンのゴールを明確にする

プレゼンの成功、ゴールとはどこにあるのでしょうか。

まずここを徹底的に理解すること、自分のプレゼンの目的を考えることから始めましょう。

プレゼンを行なうからには、何かしら売り込みたい、宣伝したいものがあります。

自分自身のことであったり、会社のことであったり、商品のことであったり、新規事業の企画であったり。

なぜこれらをプレゼンする必要があるのか。答えは単純明快で、相手の賛同や許可が必要だからですね。

「Yes」「いいね!」と言わせる。結果として、自分のことを覚えてもらったり、会社に入社してもらえたり、仕事をもらえたり、資金を提供してもらえたりする。

つまりプレゼンのゴールとは、相手にプレゼンのコアな部分について理解してもらい、共感してもらい、なんらかのアクションを起こさせること。

資金を調達するためのプレゼンであれば、出資者に名乗りを挙げてもらうこと。

商品の売り込みであれば、「それ、買うよ」と言わせて申し込みをしてもらうことがゴールになります。

提案内容がもたらす未来に共感してもらう

ちょっとビジネスから遠ざけて、日常生活で考えてみても同じです。あなたが長年の恋を実らせて、プロポーズをすることになった場合。

ゴールは「結婚してください」「はい。結婚しましょう」と言わせることですね。そういう意味では、プロポーズもプレゼンです。

プレゼンの成功とは、こちらの意図通りに相手を動かすこと。

そのために必要なのが、あなたの提案内容を取り入れたことで得られる未来に対して、心から共感してもらうことです。

感情を揺り動かす

プレゼンのゴールである、相手にアクションを起こさせること。

そのためには相手の感情を揺り動かすことが欠かせません。果たしてどんな状態が、感情を揺り動かされた状態といえるのでしょうか。

  • 期待感:「わくわくする」「何それ?もっと知りたい」という感情が生まれる
  • 欲求の喚起:「それ、欲しい!」という欲求が喚起される
  • 共感:「その通り! そうなんだよね」という納得と共感が生まれる
  • イメージ:「面白そう」「美味しそう」「自分にもできそう」というイメージが湧く

上記に挙げたような感情を持ってもらえたら、あなたのプレゼンによって相手の心が動かされています。

ひとつ注意したいのが、プレゼンの聞き手は「説得してほしい」とは思っていないこと。

説得よりも納得、納得よりも共感したい、というのが本心です。あなたが相手に対して

「この案を取り入れるように説得してやろう」と思っていたら、きっとそのプレゼンは成功しません。

興味のないことを説得されて、半ばだまされたように取り入れるよりも、自分自身が納得して共感したほうが、実行する気持ちになるはず。

説得することよりも、共感してもらうことを意識しましょう。

プレゼン成功の可否は、共感を得られるかで決まる。

聞き手の感情を揺り動かすことが、プレゼンの命。これを念頭に置き、具体的なコツをあらためてチェックしてください。

4.テクニックの先にあるプレゼンの「本質」

前の章ではプレゼンのコツについて紹介しました。

しかしコツを知ったとしても、付け焼き刃のノウハウや一夜漬けの準備だけでは、必ず上手くいく保証はありません。

プレゼン上手な人は、テクニックだけでなく「本質」を理解しています。

プレゼンを成功させるために知っておきたい「本質」とは何か。優秀なプレゼンターとして有名な方が紹介しているポイントと共に確認してみましょう。

プレゼンをコントロールできるくらいの自信を持つ

マッキンゼー・アンド・カンパニーには、ジーン・ゼラズニーというビジュアル・コミュニケーション・ディレクターがいます。

氏の著書『マッキンゼー流プレゼンテーションの技術』では、“優れたプレゼンターが持っている3つの条件”が紹介されています。

その1つ目は、事前準備を徹底することです。

著書では、優れたプレゼンターの特徴として、「自信」を持っていることが紹介されています。

優れたプレゼンターはプレゼンの最中に、どんなことが起きても冷静に対応する自信を持っているそうです。

自分自身が行なうプレゼンのすべてを把握していて、急な質問やトラブルが起きても動じません。

プレゼン資料についても精通しており、聴衆のことも理解して、プレゼンの場と時間を自らコントロールできています。

それが優れたプレゼンターだと紹介されています。

注目すべきは、プレゼンの場を自分のものにするためには「入念な事前準備を行うこと」が重要である点です。

3分のプレゼンテーションであっても、その何十倍もの時間をかけて、イメージやロープレを行う人が多いようです。

ぶっつけ本番ではなく、充分な事前準備をすることが、優れたプレゼンターの共通項と言えるでしょう。

誰よりも提案内容の妥当性に確信を持つ

優れたプレゼンターの特徴の二つ目は、提案する内容の妥当性に確信を持っていることです。

当然のことながら、自分が行う提案に対して、内容が妥当であるという確信を持っていなければ、聴衆が「良い」と感じてくれるとは期待できません。

つまり、提案する内容を何度も振り返り吟味し、疑問が残るようであれば提案内容を変更するなど、確信を持てるプレゼン内容を用意することが重要だと著書では説明しています。

絶対に伝えたいという熱意を持つ

最後に3つ目の共通点です。

根性論、気合論のように聞こえるかもしれませんが、優れたプレゼンターの共通点として挙げられているのが「熱意」です。何が何でも自分の提案内容を伝えたいという強い意志、熱意を持つことが重要です。

上手に話すことができたり、ロジックで聴衆を納得させ続けることができたら、それは素晴らしいプレゼンです。

しかし、極端な話として、下手でも熱意さえあれば、一定のところまでは相手の心に届きます。

逆に、テクニック的に申し分のないプレゼンでも、発信者の熱意が感じられなければ、聴衆は心を動かされないかもしれません。

もしあなたがプレゼンに苦手意識を持っていたとしても、絶対に伝えたい提案があり、熱意を持って真摯に語りかけたら、あなたの熱い思いは聴衆に伝わるでしょう。

真剣に伝えようとしている人の話であれば、自分自身も真剣に聴こうと思った経験は誰にでもあるでしょう。

本稿で紹介する様々なテクニックは、あなたが伝えたいと思う熱意の上で成り立っていることを忘れないでください。

逆に考えると、どんなテクニックを身につけて、豪華絢爛な演出をしても、熱意がなければ見透かされ、プレゼンのゴールに達することは難しくなるということです。

5.プレゼンにおける苦手を克服する方法

プレゼンにおいて最も重要なものが、熱意であるとお伝えしました。

とはいえ、やはり心情としては、熱意あるプレゼンを出来る限りスマートに行ないたいもの。

プレゼン下手だと自認する人は、いくつか苦手なポイントがあることでしょう。

ここでは、苦手ポイントの克服方法について考えてみます。

あがり症を克服する方法①

プレゼンに限らない話ですが、人前に出ると「あがって」しまい、上手に話ができないという悩みを抱えている人は多いでしょう。

そもそも日本は欧米に比べて、学校生活でスピーチを行なう機会が少なく、訓練ができていない人が多いという現状があります。

「いやいや、日本人にだって、上手にスピーチやプレゼンをする人がいるよ?」

と思いますよね。でもそれは、先天的なものではなく、本人の努力や訓練、場数による慣れで発揮されている能力です。

多くの訓練を受けていない人にとって、人前で話をする、プレゼンを行なうという行為は緊張をともなうもの。

あがってしまったとしても、ごくごく普通のことなのです。

実はいま述べた「あがってしまうのは普通のこと」が重要なキーワード。

あがってしまうことは、誰にでも起きる状態だと理解しましょう。

あがってしまうあなたが「異常」なわけではありません。そもそもあがるという状態は、基本的には心理的な作用。

いってみれば、あがりやすい人は敏感であったり繊細な部分を持ち合わせているだけのこと。少しその状態が顕在化し易く、他の人よりも「あがっている状態」が目に見えるだけのことです。

大勢の人の前で話をするのだから、緊張するのは当たり前のこと。

あがってしまったこと自体は上がり症でもなんでもなくて、人間として普通のことです。問題はその状態を「あがってしまった」「異常な状態だ」と捉えてしまうこと。

克服の一歩として、「人前で話をするときに緊張するのは当たり前。

あがってしまった自分が異常なわけではない」という認識をしましょう。

あがり症を克服する方法②

次に紹介するのは、あがってしまうと感じているあなたがプレゼンのときに実施するべき、心を落ち着かせる方法。

身体的にリラックスして、緊張を解きほぐしてください。

1|水を用意する

といっても、緊張した自分の頭を物理的に冷やすためではありません。

水を飲むという行為は、精神を安定させる働きがあります。緊張が強くなったと感じたら、手元にある飲料水を一口含みましょう。

聴衆からしても、これから話をする人が喉を潤すという行為に対して、なんら疑問は抱きません。

2|深呼吸をする

ゆっくりと深呼吸をしてください。ゆったりとした呼吸のリズムを意識することで、緊張が解れていく効果があります。

また自分の呼吸のリズムを意識してみることもお勧めです。ゆったりとした呼吸のリズムは精神を落ち着かせる効果があり、それを自分自身で意識する、感じることにより、更なるリラックスが期待できます。

3|姿勢を正す

まっすぐと胸を張って立ちましょう。身体と心は切り離されているものではありません。

身体の向きや動きによって、心理的な変化が訪れるのです。しっかりと胸を張り前を向く。それだけで身体から心へと、自信が伝わってくる作用が期待できます。

棒読みを克服する方法

棒読みをしてしまうという悩みを抱える方も多くいます。

プレゼンに限らず、普段の会話のときから指摘されるという方もいるかもしれません。

発声が棒読みになっていると、プレゼンにおいて重要な「熱意」が伝わりにくいというマイナスの効果があります。

ではどのようにして棒読みを解決するか。

棒読みの発声とは、平たく言うと声に抑揚がない状態です。聞き手としては感情が伴っていないように感じます。

つまり感情を込めれば、抑揚が出てくるということ。

プレゼンで喋る内容を一言一句書き出してみることからスタートしましょう。

文章にできたら、一文ごとにじっくりと見直していきます。ここでのポイントは、重要である、伝えたいと思う単語をチェックしていくこと。

ひとつの文章で、多くても1つか2つまでが妥当でしょう。

チェックが済んだら、その文章を声に出して読んでみましょう。

ポイントは、チェックした単語の部分だけ、少し声を高めにすること。これだけで、「高い声」という抑揚のひとつが加わりました。

次にもうひとつ意識して音読してみましょう。

意識するのは、文章の始まりを山の頂上として、文章の終わりを山の麓に見立て、高いところから低いところへ、山を降りていくように発声すること。

重要な単語を少し高い声で発生する。

文章全体を通じて、山を降りるように高い声から低い声へと発生する。

この2つを組み合わせると、明らかに抑揚のある発声になります。

慣れないうちは声が裏返ってしまったり、山を降りることだけに注力してしまい、重要な単語で声を高くすることを忘れてしまうかもしれません。

それでも意識して練習していけば、必ず抑揚のある話し方を体得できます。最初はふたつのポイントのどちらかひとつからでもかまいません。まずは意識すること、そして練習することが重要です。

6.おすすめの本 

プレゼンにおける様々なテクニックやコツをご紹介しました。

ここでは、上手なプレゼンを学ぶために役立つ書籍をピックアップしています。

誰もが知っている名書であり、一度は読んでおきたい本。自分の趣味嗜好に合いそうな一冊を選んでみてください。

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン|著者: カーマインガロ

あまりにも有名な書籍です。プレゼンテーションが上手な人は誰か?という問いをすれば、おそらく多くの人がスティーブ・ジョブズの名前を上げるでしょう。彼がどのような準備をして臨み、どのような仕掛けでプレゼンを盛り上げたのか。その方法ではなく、考え方を学ぶことで、きっとあなたのプレゼン力が向上するでしょう。

TED 驚異のプレゼン|著者: カーマインガロ

プレゼンテーションの場として有名なTED。人気プレゼンターから学ぶ、9つの法則が解説されています。シェリル・サンドバーグ、ビル・ゲイツ、アンソニー・ロビンズなどが行なったTEDでのプレゼンを、科学的に分析しています。

プレゼンは資料作りで決まる|著者: 天野暢子

提案する側と決裁する側の立場で、1000を超えるプレゼンに携わってきた著者が明かす、通る資料の作り方。プレゼンのキーツールである資料の作り方を、通る資料作りの極意から学ぶことが出来ます。

孫正義 奇跡のプレゼン|著者: 三木雄信

孫正義氏のプレゼンについて解説されています。本稿でもプレゼンに最も大切なこととして紹介した、情熱、熱意。孫正義氏のプレゼンも「情熱を持って志を語ること」が特徴と解説されています。プレゼンにおける情熱、熱意の込め方が学べます。

ひとつ上のプレゼン|編集:眞木 準

著名なコピーライター、クリエイティブディレクター、CMプランナーなどのクリエイターによる、プレゼンに勝ち続けるノウハウが紹介されています。実際のエピソードを交えながら、ノウハウやアイデア、経験、哲学を知れる書籍です。

7.まとめ

6つの章にわたり、プレゼンのコツやノウハウをご紹介しました。

繰り返しになりますが、最も大切なのは、必ず伝えたいという熱意です。

あなたの提案内容を聞き手に届けたいという強い思いがあれば、プレゼンの半分は成功といえるでしょう。

強い熱意を持った上で、今回紹介した様々なテクニックを用い、納得のいくプレゼンが行なえるように工夫してみてください。あなたの成功を祈っています!